V

□5章 指針


「ウ……ウソ……」

「……」

「……」

「……って、いやいやいやいや!!ダマされないから!
こ、こんな杖、偽物に決まってる!
そうですよね、お師匠様!アンチさん!」

「……」

「……」

「……あ、あれ……なんで無言??
え、ちょっ……や、やめてくださいよ。
怖いじゃないですかー!」


ガールに背中をぽかぽか叩かれても、兄弟子達は口をつぐんだままだった。

ふたりは、腐っても最高位の黒魔術師。
自分の師匠の杖が本物か偽物かくらい見ればわかる。…わかってしまう。

目の前に転がるそれは、ブラックカオスの杖だった。
感じる波動も、魔力も、間違いなく自分達の師匠のもの。
偽物の可能性も確かにあるのだが…それにしては精巧に作られ過ぎている。


「マジか、おい……」

「……っ」


アンチはようやく言葉を絞り出すが、ブラックマジシャンは硬直したままだ。
彼は舌よりも、頭が先に回り始めていた。
いつになく、ふつふつとした熱い感情に突き動かされていく。

…杖がここにあるからと言って、本当にカオスが死んだかどうかはわからない。
しかし少なくとも、目の前にいる敵は、あのカオスから杖を手放させるほどのことをした。

カオスを、傷つけた――……?


「…………!!」
  1. 怒りに身をまかせる
  2. じっと耐える


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