V
□4章 変身
「じゃあ、ひとまず…………
着替えますか!!」
「……。……は?」
「服ですよ、服!
せっかく現実世界に来たんですから、いつもの鎧は脱いで、
この世界の服、着ましょうよ!
私、この衣装も結構お気に入りですけど、
一度くらい、人間と同じ格好してみたかったんですよねー!」
「なっ……。
ガール、この非常時に何をのん気な……!」
と、ブラックマジシャンは表情を険しくするが、
もうひとりの黒魔術師は、存外、乗り気な笑みを浮かべる。
そのまま、兄弟弟子の腕をズルズルと引っ張った。
「いい案じゃねぇか、チビっ子。
俺も現実世界の服装には、ちっと興味があったんだよな。
この鎧も正直飽きてきたしよー。
ちょうどそこに服屋もある。行こうぜ、兄弟」
「ちょっと待て!お、お前までなんだ!
今、私たちは世界の危機を前にして……」
「私たちが着てる衣装と鎧は、いったん魔法で消しておきますか!
お店の人は……いないみたいですね。
今なら、服、持っていき放題です!」
「は、犯罪だろう!それは!」
「だーいじょうぶだって、兄弟。
ゴタゴタが全部片付いたら、服はちゃんと店に返すからよ」
「そういう問題では……!」
「ほらほら、お師匠様。
マスターが好きな『シルバー』もたくさんありますよ!」
「――買い占めるぞ!
グズグズするな、ふたりとも!!」
…見事な手のひら返しで、
星が零れそうなほど、目をキラッキラさせながら店に突撃する黒魔術師。
そんな彼を、それはそれは微笑ましい笑顔で見送りつつ、
ガールとアンチも店へ歩き出した。
「いやー。
武藤遊戯が絡むと、ホント面白ぇよな。アイツ」
「お師匠様は一途ですからねぇ」
「…ところでチビっ子。お前、『シルバー』ってなんだかわかってんのか?」
「知りません♪」
「……」
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