V

□2章 救出



突然、ブラックマジシャンは、総毛立つ。

理由はわからない。
ただ、魔術師としての本能が、なにかの危険を警告していた。

その気配に気づいていないのか、
アンチはのん気に、ぺちぺちとガールの頬を叩く。


「ぜんっぜん起きねぇな、コノヤロー。
…世界が消えかかってんのに、のん気な寝顔しやがって」

「……!!」


――瞬間。
ブラックマジシャンは、
本能が警告する、危険の正体を見抜いた。


「――離れろッ!!」

「あん?」


アンチが、ブラックマジシャンを振り返る。


同時に、ガールの身体が跳ね起きた。


「っ!?」


ガールの目に、いつもの明るくで無邪気な光はない。
瞳は、凪の海のように静かで、感情がなかった。

それはまるで、誰かに操られているような――。


「ブラックバーニング」

「っ!!!」


ドガァァァァン!!!








ところ変わって。カオスサイド。


大魔術師は、光の波の目の前にして、杖を構えていた。

なにか思案するように、目を閉じる。


「…………そうか…」


やがて、なにかを察したようにつぶやき、目を開けた。


「やってくれたな…。
一体、いつの間に……。

…ガールの精神は、敵に乗っ取られている。




初めから――狙いは、向こうか」
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