V

□1章 始動


――なにやら、今は確かに、いつものふざけた状況ではないらしい。

ここから、逃げねばならないこともわかった。

しかし…そうする前に、重要なことがひとつある。


「……!!
ガ…ガールは…ガールはどうしました!
まさか、あの光に…!?」


最悪の事態が頭をよぎったが、カオスは小さく肩をすくめる。


「安心しろ。
お前の大事な弟子は、我が魔力でひとまず守っている」

「あ…そ、そうですか」


それを聞いて、ブラックマジシャンは、ほっと胸を撫で下ろす。

…ここにガール本人がいれば、師匠の嬉しい反応に、狂喜乱舞してたところだ。

すると、今までずっと黙っていたアンチが、痺れを切らしたように叫ぶ。


「〜〜おい!
だったらチビっ子連れて、早く現実世界行こうぜ!
もう光がすぐそこまで来てんじゃねぇか!」

「おお、そうだな。
これは本気でちょっとヤバイ。

では、アンチ、ブラックマジシャン。
まずはガールを探しに行け。

魔力の気配を辿れば、ガールの元に行けるだろう」

「おう、わかった!」

「うむ。
では、我はもう行くぞ」


そう言うと、カオスがふわりと宙を浮く。

それを見て、慌てたようにブラックマジシャンが引きとめた。


「い、行くってどこへです?
あなたも、私達と共に、現実世界へ向かうのでは……」

「我は、もう少しこちらの世界に残る。
あの光を生み出した、憎いアンチクショーの正体を探るため、
色々とやることがあるのだ」


ようは、『敵』の正体を知るため、単独行動するらしい。


…ここまでの状況を聞いて、ブラックマジシャンは、ただただ混乱していた。


いつも、ドタバタして、からかわれて、それでもどこか平和で楽しい日々を送っていたのに。
その全てを壊すかのような、この事態。

もともと、心の内に秘めていた、仲間を想う気持ちが急激に膨れ上がる。


「……っ…。
…カ、カオス様!」

「ん?」


ブラックマジシャンは、危険をかえりみず、
ひとりで行動する師匠に――。
  1. 声をかける
  2. 声をかけない


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