V
□1章 始動
「……!
なんだ…?」
妙な気配を感じて、ブラックマジシャンは周囲を見渡す。
――瞬間、息を飲んだ。
「……!?
なんだ、これは…!」
ブラックマジシャンは、自分の目を疑った。
彼の周りには、いつものように静かな闇がある。
しかし、そこに突然、白い光の波が現れた。
光の波は、ゆっくりと闇を侵食し、溶かし、飲みこんでいく。
突然のことに言葉を失い、ブラックマジシャンは無意識に、一歩後退した。
――と、その時。
「おお、ここにいたか」
「無事か、兄弟!」
「……!
ブラックカオス様!それに、お前まで…」
目の前に現れたのは、ブラックカオスと、アンチブラックマジシャン。
その顔には、珍しく焦燥が浮かんでいる。
だが、それよりもまず、ブラックマジシャンは目の前の異変のほうが気になった。
「ブラックカオス様!
あの押し寄せる光は一体なんなのです!
また、あなたのくだらないイタズラですか?」
「くだらないとは失礼な。
我はどんなイタズラにも常に全力で取り組み、
全力でお前をからかうことを、生きがいとしているのに。
…いや、待て待て、我が弟子よ。
今はちょっと、そういう空気ではないのだ」
「え?」
「いいか、よく聞け。ブラックマジシャン。
今、世界は消滅しかけている」
「…………。
は……?」
突然の発言に、ブラックマジシャンは目と口を丸くする。
なにをバカな、と反論したかったが…カオスの目に、いつものふざけた感じはない。
「あの光は、我らデュエルモンスターの世界と、
現実の世界までも飲みこもうとしている。
あの光に触れた者は、消滅するのみだ」
「し…消滅…!?
…あの光は、一体なんなのですか?」
「さあな。どこからか、この世界に入りこんだ。
普段なら、我が真っ先に気づいて侵入を阻止するのだが……。
さっきまで、ゼアルUの再放送に夢中になってて対処が遅れた」
「…ブラックカオス様。
あなた、真面目なのかふざけてるのか、どちらなのです」
「真面目だぞ。
今日の我は超真面目。
すでに、我らの仲間も、ほとんどあの光に飲まれて消えた。
現実世界の、人間やデュエリストも、また同じだ」
「…………!?」
…とんでもない発言を、サラっと言う性格は変わっていない。
しかし、今回ばかりはその内容が衝撃的すぎる。
消えた?
仲間や……現実世界の人間が?
ブラックマジシャンが硬直している間も、カオスは淡々と説明する。
「で、だ。
このままでは、この世界も消える。
そこでブラックマジシャンに、アンチよ。
お前たちは、今から現実世界へ行け」
「っ!?わ、私たちが、現実世界に……?」
「うむ。
現実世界は、光の浸食が遅い。
そちらの方が安全だ」
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