V

□5章 指針



「…………は……?」

『――ブラックカオスは死んダ。
私ガ殺した』

「…………」


冷たい宣告に、魔法使い達は凍りつく。

しかし――ブラックマジシャンはすぐに冷静さを取り戻した。
続いて、アンチブラックマジシャンも敵に悟られぬよう、静かに呼吸を整えてから
いつもの不敵な笑みを浮かべる。

あのブラックカオスを、簡単にどうにかできるわけがない。
元々、殺しても死なないような人だ。

少々素直すぎる一面を持つガールは、敵の言葉さえも素直に受け入れ、まだ不安そうにしている。
だが、兄弟子達の凛とした姿を見て、自分も慌てて表情を引き締めた。


「そんな嘘に引っかからないんだから!」

『…ほう?』

「カオス様が、誰かに負けるはずないでしょ!」

『こレを見テモ、同じことが言えルカ?』


白い人影が、おもむろに手をひるがえす。
すると、宙に光り輝く輪が形成される。
怪物の口のようにも見えるその中心から、棒状のものが吐きだされた。

カラン、と軽い音を立てて、魔法使い達の目の前に転がる。

――途端に、彼らは思わず息を飲んだ。


「こ、これって……
……カオス様の、杖……」

『ヤツを殺しタ証とシテ、奪ってやっタわ』
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