V

□4章 変身

(はああ〜〜…!よかったぁぁ……!!)


ブラックマジシャンと、(ついでに)アンチも無事、
敵の触手モンスターから逃れられ、ガールはほっと胸を撫で下ろす。

…できることなら、自分も戦いに参戦して、師匠を助けたかった。
しかし、力の差を考えると、自分は足手まといになっていたかもしれない。

最悪の場合、自分だけドミノ町への脱出が間に合わず、白い光に飲まれて消滅していた可能性もある。

ブラックマジシャンとアンチは、きっとそのことを見越して、
自分だけ先に現実世界へ逃がしてくれたのだ。

…こんな風に、兄弟子ふたりに守られることは、修業時代から何度もあった。


(でも……今は、私だって立派な魔術師のひとりなんだから!
お師匠様と……あ。ついでに、アンチさんの力にもならないとね!)

「……おい、チビっ子。
お前、さっきから俺に対して失礼なコト考えてねぇか?」

「そんなことないですよー!」


にこやかに誤魔化しつつ、ガールはひと息つく。
そして、改めて自分たちが到達した現実世界――ドミノ町を見渡した。


「……ひえええ…これは、なんというか……
すごいコトになってますね、お師匠様」

「…ああ」


ガールの言葉に、ブラックマジシャンはどこかあ然としたまま答える。

彼女たちが立っている場所は、確かにドミノ町なのだが――完全に空間がねじ曲がっていた。
車が通るはずの道路は空にめり込み、
地面には、雲ひとつない青空が広がり、
人が住む家々は半分白い光に飲まれている。

逃げ込んだ現実世界は、すでにゆっくりと『現実』を失い始めていた。


「…そういや、カオス言ってたよな。
現実世界も、白い光に浸食されてるって。
浸食のスピードは、あくびが出るほど遅ぇみたいだけどよ」

「……ああ」

「ったく。あの人もあの人で、説明下手っつーかなんつーか…。
現実世界に来たはいいが、これからどうすりゃいいんだ?」

「……ああ」

「いや、『ああ』じゃなくてよ。兄弟」

「……ああ」


…壊れた機械のように、同じ返事を繰り返すブラックマジシャン。

さすがに異変に気づき、ガールとアンチは顔を見合わせた。
そのまま、そそくさとブラックマジシャンの背後へ移動し、ふたりはしゃがみこむ。
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