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□城之内ファミリーの進撃・前編
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『城之内ファミリーの進撃・前編』
水を打ったような静寂。
一片の雑音も許さない空間で、ブラックマジシャンは瞑想していた。
彼の呼吸音すら静寂に溶け、空気の一部となっている。
と、その時。
「!!」
−−凄まじい殺気。
ブラックマジシャンは反射的に後方へ跳ぶ。
−−−轟音。
先程まで彼がいた位置に、灼熱の業火が飛来した。
「なっ……
黒炎弾!?」
「おいおい!せっかく隙をついて撃ったってのによけるなよ!」
ブラックマジシャンの前方に、巨大な影。
漆黒の竜−−レッドアイズブラックドラゴンであった。
「レッドアイズ…!
貴様、何の真似だ!」
ブラックマジシャンが杖を構え、臨戦体勢をとる。
すると、レッドアイズは真紅の瞳を気まずそうにそらした。
「あ−、わりぃ。恨みは全くない。
全くないんだが……
とりあえず俺の黒炎弾に三、四発当たってくれ」
「ふざけるな!
何のためにだ!?」
「俺達を助けると思ってだ」
「なん……」
言葉を続けようとすると、突然、ブラックマジシャンの背中に重圧がかかった。
「………!?」
重さに耐え切れず、そのまま倒れる。
首だけで振り返ると、彼の背中には見覚えのあるモンスター達が乗っていた。
「ワイバ−ンの戦士に…
炎の剣士!?
貴様らまで一体どういうつもりだ!」
「勘忍してくだせぇ、旦那」
「非礼を許せ、黒魔導士殿。
黒竜殿!今だ!!」
炎の剣士の掛け声で、レッドアイズは口に光を溜め始める。
「くっ……!」
ブラックマジシャンは必死にもがくが、二人がかりで押さえつけられてはどうにもならない。
次の瞬間、竜の口腔から、灼熱の焔が発射された。