V

□3章 脱出

(やはりここは……!)

バッ!と後ろへ飛び退くブラックマジシャン。
相手の能力がわからない以上、無暗に前へ出るのも危険である。
ここは安全策を取ることにした。

…しかし。
今回ばかりは、その慎重さが裏目に出ることとなる。


…ぎゅるん!!


「ぐっ!?」


一瞬、ブラックマジシャンの呼吸が止まる。
何かが、首に巻きついてきた。


(なん、だ……!?)


見れば…自分の首に巻き付いてたのは敵の触手。

信じられない気持ちで振り返ると、
その触手は地面を突き破って生えてきており、ブラックマジシャンの首に絡みついていた。


どうやらあのモンスター、この付近一帯へ、触手を根のように張り巡らせていたようである。


(油断した……っ)


慎重になりすぎた自分を、今さらながらに責めるブラックマジシャン。
その間にも、触手はギリギリと首を絞めつけてくる。


「く……ぐ、ぅ……
離せ……!」

ギリッ…!

「あ、ぐっ……!!」


敵に視線を叩きつけながらも、苦鳴を上げるブラックマジシャン。
あまりの苦しさに、思わずがくり、と膝をついた。


…しかし、なぜか触手は、そのまま絞め殺そうとはしてこない。


(……!!
遊ばれているのか……!)

「貴様ッ……!」

ギリリッ…!

「はッ……ァ…!
くそ…!やめっ……!」



「キャー!!キャー!!
マイナーだけど、ああゆうのも捨てがたーーい!!
アンチさん!ほらほら、シャッターチャンス!」

「「真面目にやれェェ!!!」」


…この時ばかりは、ブラックマジシャンはアンチに同調し、
自分の状況も忘れて、鋭いツッコミを入れたのだった。
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