流れ星に、接吻

□流れ星は人攫い
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「顔赤いよ? 月子」

「そ、そんなことない!」

 無駄に張り上げた声は虚勢だってことがばればれだった。雪は口の端を上げたままわたしを見ている。しかも距離は数センチしか離れていないままで。

「ね、してあげよっか。さっきの女、別に好きじゃないし」

 何を。何を。何を。動くこともできないまま、わたしは口を鯉のようにぱくぱくするだけだった。

「何をって顔してる。分んない? キスだよ、キス。さっきの女より幾分、月子の方がマシだし、そんなに顔、赤くして見つめられちゃあ、ね」

 ぱくぱく。ぱくぱく。ただ心臓を吐いてしまいそうになるくらいどきどきしているのだけは分かった。この非常識な双子の兄は何を言っているの。完璧すぎる鼻もちならない双子の兄でしかなかった雪が知らない人に見えた。

「あ、心配してるの? ぼくらは双子なのにって」

 そんな心配はしていない。今すぐにここを離れたかったが、わたしの足は立っているのが精一杯だった。

「でもね。ぼくら、キスしたっていいんだよ。だって血は繋がってないんだから」

 へ。最後の一言でその少し前の出来事がすっと消え去った。
わたしは自分より背の高い笑っているけど笑っていない雪の顔を見上げている。嗚呼、星空が見える。今日は星が多いみたい。また、流れ星が流れた。
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