-adult love story-

□禁恋A*大澤駆
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「おー!久しぶりだなー!」
「先輩、ちょっとメタボっすかー?」
「ずいぶんな挨拶だなー!」




今日は、青城学園陸上部OB・OG会で、私も元マネージャーとして参加していた。

あの小早川先輩は、走り高跳びの選手として活躍し、オリンピックでは金メダルを取るほどになっていた。


みんな、懐かしさもあり、思い出話に花が咲いている。

「ごめん、みんな待たせちゃったかな?」
「おー!!大澤先生!!」
「大澤先生!!久しぶりです!!」


私は、声のする方を振り返った。


(大澤先生…)


あの頃と、ちっとも変わっていない笑顔で、生徒たちにあっという間に囲まれる。


ただ一つ変わったことは……


「先生、奥さん妊娠してるのにこんなとこ来てよかったのー?」


そう。

大澤先生は、三年前に結婚をし、奥さんは第一子を妊娠中でもうじき出産するらしい。


「大丈夫だよー。今、実家に帰ってるから。」
「じゃあ今は独身気分ってわけかー。」
「まぁね。今日は思いっきり楽しむよー!」




みんなそれぞれに会社勤めをしたりで、所々で上司の愚痴で盛り上がったりしていた。

私もそれなりに楽しんでいた。


「隣、いいかな?」
「え…」

顔を上げると、そこには大澤先生がいた。

「どうぞ。」
「ありがとう。」

大澤先生が座る。


先生の服の匂いも変わっていた。

家庭的な柔軟剤の匂い。

左の薬指には銀色の指輪。


「元気にしてた?」
「まぁ…なんとか…」
「今、何してるの?」
「普通にOLしてます。」
「そっかぁ…。」

先生は、ビールの入ったグラスに口をつけた。

「…先生、奥さんとはどこで知り合ったんですか?」
「ん?大学時代の仲間に紹介されたんだ。」
「そうなんですか…。幸せそうで安心しました。」

今度は私がチューハイを飲む。


実は、私と大澤先生は付き合っていた。

だけど、別れてしまった。

大澤先生に会ったのは、別れてから初めてだった。


「幸せに見える?」
「え…?」

意外な言葉だった。

「理想と現実は違うよ。」

そう言って先生は私を見た。

「もう少ししたらここを出ない?もちろん別々に出て、どこかで落ち合おう。」
「先生…?」
「静かな場所で話したいんだ。」

優しくも真剣な瞳で訴えるから、私は頷いていた。

お互いに嫌いになって別れたわけではなかった。

だから好きだった想いはいとも簡単に溢れてきて。

先に大澤先生が店を出て、頃合いをみて、私が出ることになった。





「ごめん、僕帰るよ。」
「えー!もう帰るんすかー!?」
「飲むの久しぶりだったからちょっと酔っちゃった。ひどくなる前に帰るよ。」
「奥さんから電話あるかもしれないしねー。」
「そうかもしれない。じゃあみんなも飲み過ぎないでね!」



大澤先生はうまく言って、店を出ていった。







**************

「先生、すみません。」
「大丈夫だよ。」

私もあのあと店を出て、急いで先生の待っているコンビニ脇の駐車場に行った。

「少し歩こうか。」
「はい。」

私たちは、歩き出す。


「もう少し行くと、ラブホがあるんだけど……」
「…え…」
「いけないとわかっているけど…今、君にすごく触れたい…」
「先生…」
「いい?」
「……はい……」



教師と生徒の恋愛だったから、堂々と街を歩くことなんかできなくて、デートはいつも先生の家だった。

それでもたまに、遠くへドライブに行ったり、こうやってラブホに行ったりした。

私にとって、先生が初めての人だった。

先生と別れてから、一度だけ付き合った人はいたけど、いつでも先生と重ねてしまい、うまくはいかなかった。




「オシャレな指輪ですね。」

私はなんとなく指輪のことを聞いてみる。

「カミさんの趣味だよ。カミさんはお嬢様だから、わがままでさ。指輪もしたくないのに、しろしろうるさくて。指輪をしてれば寄ってくる生徒もいないからって。」
「先生、人気者ですもんね…。」
「いや、カミさんが嫉妬深いだけだよ。だから今日の飲み会は言ってないんだ。」
「大丈夫なんですか?」
「多分、ね。」


ラブホまでの道のりを、そんな会話をしながら歩いた。








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