短編

□その涙、掬えずに
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人魚と若者は、引き裂かれる運命だったのかな……






羽ヶ崎学園を卒業してからもう一年…
あの灯台に彼が現れる事はなかった

来てくれると信じていたのに
夕日が沈んでも、彼は来てくれなかった






ハッピーエンドって、やっぱりおとぎ話の中だけだったんだ………


そう思うと、彼の照れ臭そうに笑う顔が浮かんできてぼろぼろと涙が零れて来た。






「っ……、…志波くんっ………」






今、彼は野球選手として球団に入り好成績を残している




たまに彼がテレビに映っているのを見ると胸が締め付けられるかのようで凄く苦しい








どうして、私に優しくしたの?
どうして、泣いている私を慰めてくれたの?









「ねぇっ……、どうしてよ…志波くん………っ」






ベッドに涙がこぼれ、染みを作っていく
生地に涙が吸い込まれる様は


おとぎ話の中の人魚姫が、
海に泡となって溶けて消えていくように見えた









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