〜 傀 儡 絵 〜
□に
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[ お世話になります。 ]
それからしばらく経って、あたしは退院した。その間もミナトさんは何度もお見舞いに来てくれた。
退院も近づいてきたある日、ミナトさんは女性を連れてきた。
その人は赤く長い髪をしておてんばな人だった。ミナトさんとすごく仲がいいらしい。
「この人はうずまきクシナ。クシナ、この子がはる。退院と同時に引き取ることになってるんだ」
「はじめまして。うずまきクシナよ。何か困ったことがあったらいつでも頼ってね!男の家じゃ何かと不便だろうし、私もミナトの家にはよく顔出してるから」
クシナさんにはそれ以来会っていない。クシナさんも忍だから忙しいんだろう。たぶん、これからはしばしば会えると思う。
退院した日、荷物らしい荷物なんてなくて、支度には手間取らなかった。
ミナトさんに連れられて里の中を歩いた。里は懐かしいよな、知らない土地のような、なんだか不思議な感じがした。
キョロキョロしていたのか、前を歩いていたミナトさんが笑いながらあたしを見て言った。
「里が珍しいかい?後で案内してあげようか」
『あ、えっと…』
「今日から君もこの里の一員なんだから里の地理はわかってた方がいいでしょ?」
『じゃあ、お願いします』
「それと、敬語もいらない。俺たちは家族になったんだから」
『かぞく…?』
「そうだよ」
『裏切らない?』
どうしてそんな言葉が出てきたのかわからない。自分で言っておきながらすごく泣きそうになったのがわかった。
「裏切らないよ、絶対。約束だ」
ミナトさんは笑いながら小指を差し出してきた。あたしは自分の小指をミナトさんの小指に絡ませた。
ミナトさんの笑顔と小指から伝わる体温に初めて安心感を覚えた。
そしてミナトさんはイケメンだった。
◇◇◇
「ここが僕の家」
言ってミナトさんは玄関の戸の鍵を解除し、戸を開けた。
家の中は片づいていて男性の一人暮らしとは思えなかった。
聞けば、「クシナが片づけてくれるんだ。もちろん、自分でもちゃんと掃除くらいするよ?」とのこと。
それからとある一室に案内された。
「ここが今日から君の部屋だよ」
まさか部屋を与えてもらえるなんて思わなかった。
何から何までしてもらって申し訳なかった。こんなにも他人に迷惑を掛けて生きていくくらないならいっそのこと消えていなくなってしまいたいと思った。
それを察したのか、ミナトさんはあたしの頭を撫でた。
「そんなに遠慮しないで。言っただろう?家族だって。そうだ、もう少し俺のことを教えてあげようか?」
「おいで」と言ってミナトさんはあたしをリビングへ案内した。
ソファに座らされ、お茶を出してくれた。
「オレの名前は波風ミナト。ってもう知ってるよね。誕生日は一月二十五日。血液型はBだよ。よかったら覚えておいて。それで…」
それから二枚の写真を見せてくれた。
「この人は恩師である自来也先生。これはオレがまだ下忍の頃の写真だね。で、こっちがオレの教え子たち。左からオビト、リン、カカシ」
『ミナトさんは先生なの?』
「うん、そうだね。この子たちの担当上忍」
『この人…』
なんとなく、一番右のカカシという人を指さした。
「見覚えがあるのかい?」
『ううん』
「そっか…。カカシはね、五歳でアカデミーを卒業して六歳には中忍に昇格してる、優秀な子なんだよ」
五歳でアカデミー卒業、六歳で中忍…。
なぜだか親近感がわいた。
『友達…できないだろうに…』
「え…?」
『周りの子たちは大きいくて、自分はその人たちより優秀。だから友達なんてできないよ』
それはまるで自分に言っているようだった。
「友達、できなかったの?」
『……わからない。友達って何?』
「そうだな、友達っていうのは…本当に信頼できる人のことかな。家族でも異性でも先生でもなくて」
『たぶん、ほしいって思ってた。友達。そのことはなんでかな、覚えてるよ』
「これから作ればいいさ」
『できるかな』
「きっとできるよ」
ミナトさんの笑顔は心のモヤモヤを消してくれるみたい。
「そうだ、お腹すいてない?そろそろクシナが来ると思うんだけど」
『クシナさん?』
「夕飯を作ってくれるから。はるの退院祝いもしなきゃだしね。クシナの手料理はおいしいよ」
(いっぱい食べてね、はる!)
(いただきます…)
(おいしい?おいしい?)
((まだ食べてないよクシナさん気が早いって))