V

□[曼珠沙華 前編]
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※この物語は華街道物語の設定と同じですが銀新の華街道物語と繋がりはありません


詳しい設定はこちら



遊廓の話が嫌いな方

でなければ、ご観覧ください










幼い禿(カムロ)達は夢をみる。それはこの遊郭という鳥籠の中から逃出したいというものより

お職の花魁になり綺麗な着物を着、やがて身請させられる事を夢みてる

それはきっともう諦めてしまったから

鳥籠に入れられた綺麗な小鳥のように
ビードロの中泳ぐ可愛い金魚のように

幼い禿(カムロ)達は

もう この場所に足を踏入れたら最後

おのこに抱かれるという運命からは


のがれられない










綺麗に咲いている花もやがては枯れるように僕も此所でいつか

枯れ果てるのを待つのでしょうか


だけど綺麗に咲いている間は虫にたかられる花のように
遊郭にたかる男に枯れるまで貪られる


「また、御越し下さいませ」


馴染みのお客様に嘘の笑みを顔に張り付けて会釈する

こんなのは日常茶飯事、毎日同じように繰り返されるやり取り
そして汚らしいおのこに躰を弄ばれる日々

先程のお客様は本当は姐女郎の馴染みの客だった

だけどその姐女郎が流行病に倒れてから名代に僕が出て

遊女お得意の手練手管というものを使う間もなく


男は僕に墜ち


病に倒れていた姐女郎はやがて息を引取りその客は僕の馴染み客となっていった

男なんて単純だ。同じ男だけど時々馬鹿らしくみえてくる

愛してる愛してると囁かれ抱かれたとしても遊女は滅多に客に心開かないし

それに

遊女には大半本当に愛してる間夫という存在がいる

そのお方が来るのを今か今かと待ち来ぬ日は涙を流すのだ


僕にはそんな間夫という存在はいないけれど



「あいつまた来てたのか?ククッ、愛されてんな新八」


心から愛してる人はいる


「高杉さんっ!だから本名で呼ばないでって言ってるじゃないですか!?」


ふぅっと煙管の紫煙をくゆらして喉で笑う彼を恨めしく見ると
また笑って頭をぐちゃぐちゃと撫でて来る


「良いじゃねぇか、今女将居ねぇし。それに」



──俺はお前の本名の方が好きだ





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