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□[あまえんぼ]
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ずっと探してた おっきくて安らげる
愛に包まれてる

貴方の腕の中







クーラーとか扇風機で身を涼めたくて、かき氷やアイスクリームが恋しくなる

この季節、気温は30度近くになるはずなのに突然真夏にチラチラと雪が降り出した


「チッ…こんなへんてこな日に限って大工の仕事かよ……」


銀さんがはぁっとする溜め息は白くって、ついでに鼻をそそる音も聞こえてくる


「こんな天気じゃ屋根に雪、積もっちゃうかもしれませんね」


はぁっと銀さんみたいに溜め息をつくと僕の息も白くて
ついでに鼻をズズッとそそった

今日は朝からこのニュースで持ち切り、チャンネル回しても

真夏に雪が!とか、怪奇現象か!?とか、

もしかして地球が壊れるかもしれない、とか


そんな事ばっかしてて結野アナも天気予報で全国的に今日は雪でしょうと言ってた


「銀ちゃんワタシ雪ダルマ作りたいネ!」

「あ〜積もったらな、つーかもう休憩の時間だから少し遊んで来ても良いぞ」


やったぁと神楽ちゃんが屋根からぴょんと飛び下りた
地面はところどころ真っ白になってて神楽ちゃんは早く積れとかハシャいでる


「寒っ……」


ひんやりした冷たい風が通り過ぎふるりと躰をふるわせていると
ふわっと背中に暖かな感触がして後ろを振返ると

白い息を吐く銀さんがいた


「大丈夫、神楽は当分戻って来ねぇよ」


もし雪が積もったらもっと帰って来ないかもなと
笑った銀さんの鼻の頭は赤くなっていた



銀さんは恥ずかしがりな僕にいつも気を使ってくれる

だからこうして神楽ちゃんが居ない間に僕を抱き締めて


「まだ寒い…?新八」


暖めてくれる




恥ずかしいから繋いだ手を解いてしまっても
恥ずかしいから貴方に素直に好きと言えなくても

そんな僕を貴方は優しく受け入れてくれて、いつも僕の事を考えてくれて


「いいえ、暖かいです」


ほんのり頬を染めてそう言うと、銀さんはまた僕をぎゅっと抱き締めて暖めてくれる


本当は子供の僕の方が体温が高くて
貴方の方が冷たい筈なのにね


「…新八」


名前を呼ばれてまた銀さんの方へ振向くと
冷たいものが唇に当りキスされていて


「ンッ…銀さん」


だんだんお互いの熱で唇が暖かくなって舌を絡めると白い息がスウッと出ていった


貴方の腕の中、優しい貴方の体温が伝わってきて
熱を失った唇がまた熱くなって凍えて悴んだ手をそっと握られて


暖かくて 暖かくて


クーラーとか扇風機で身を涼めたくて、かき氷やアイスクリームが恋しくなる


そんな季節の筈

なのにね


もしも本当に地球が壊れてしまい。この広い世界がなくなってしまうとしても


今みたいに愛しい貴方の腕の中、すっぽり入って優しく抱き締められて


世界が壊れる瞬間までずっと

貴方の傍に


……居たいな






チラチラ降る雪は静かに街を白く染め



愛しい人からのキスは

一層

深くなっていった…











おまけ


「銀ちゃん新八ぃ!見るアルちっさい雪ダルマが出来たネ!!」


神楽ちゃんの声がし、銀さんがいつものように僕を離そうとすると、
逆に僕が銀さんにぎゅっと抱き付いて離れないようにした


「新八…?」


驚いた顔をした銀さんに僕は頬を赤らめるとぎゅっと更に抱き付いて


「…まだこのままで」


居たいです。と囁くと銀さんは優しく微笑んで僕をまたふんわり抱き締めた




「あーー!!新八ズルいネ、銀ちゃんワタシも抱っこしてアル!!」


パタパタと片手に小さな雪だるまを持って梯子を登って来た神楽ちゃんに
案の定見つかって


「はいはい、じゃあ神楽もおいで」


寒天の空の下三人でぎゅうぎゅうと

抱き合っていた






もっと強く抱き締めてもう離さないで

素直じゃないあたしはどうしようもなく


いま



──あまえんぼ








おわり


歌詞は大好きな大塚愛ちゃんの『甘えんぼ』より

真夏に雪が降ったら素敵ですね!
(そして銀新はお互いを暖めてたら良い…)

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