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□ぼくのいのちへ
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喉は枯れ果てた。冷たい風がぼくの身体の傷を撫でる。
ぼくの周りを歩く人達は、ぼくを見ないようにしてるみたい。なんでかなぁ。冷たいなぁ。寒いなぁ。お腹、すいたなぁ。
お母さん、お父さん、
どこかなぁ。
もう一度叫んでみる。
でもやっぱり誰も見てくれない。
たすけて、
たすけてよ、
たすけてよぉ、
「にゃ、あ」
もう一度だけ、ないた。
幸せな夢をみたよ。お母さんがいて、お父さんがいて、それからぼくも。あったかいミルクをたくさん舐めて、お母さんのお腹みたいな、柔らかい毛布に包まって一眠り。お母さんとお父さんがにっこりして、ぼくに笑いかける。ぽかぽかする。こころもからだも。それで、ふわふわする。あったかいなぁ、しあわせだなぁ。
「また猫の死体だよ」
「困るよなぁ、こんなとこで」
「生ゴミでいいのか?」
「さぁな、いっそ燃やしちまえ」
しあわせ、だなあ。
ぼくのいのちへ
END.