□ぼくのいのちへ
1ページ/1ページ






喉は枯れ果てた。冷たい風がぼくの身体の傷を撫でる。
ぼくの周りを歩く人達は、ぼくを見ないようにしてるみたい。なんでかなぁ。冷たいなぁ。寒いなぁ。お腹、すいたなぁ。

お母さん、お父さん、
どこかなぁ。

もう一度叫んでみる。

でもやっぱり誰も見てくれない。

たすけて、


たすけてよ、


たすけてよぉ、


















「にゃ、あ」


もう一度だけ、ないた。



幸せな夢をみたよ。お母さんがいて、お父さんがいて、それからぼくも。あったかいミルクをたくさん舐めて、お母さんのお腹みたいな、柔らかい毛布に包まって一眠り。お母さんとお父さんがにっこりして、ぼくに笑いかける。ぽかぽかする。こころもからだも。それで、ふわふわする。あったかいなぁ、しあわせだなぁ。








「また猫の死体だよ」
「困るよなぁ、こんなとこで」
「生ゴミでいいのか?」
「さぁな、いっそ燃やしちまえ」































ぼくのいのち

END.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ