小品・短編(not夢)

□とある生徒への手紙
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お元気ですか?

最近姿を見せませんね。

無理にとは言いませんが、気が向いたら是非いらしてください。


・・・私がこう書いたとしても、聡い貴方は「長く出席していない生徒には手紙を出す」という利益確保のための塾という名の企業のシステムのひとつとしてこの手紙が送られていると思うでしょうね。

でも、これは違いますよ。

手書きですよ。

私の時給を考えたらコストが見合わないことはすぐに分かるでしょう?

塾から出されるのは、名前だけ差し替え印刷されたプリントですよ、せいぜい。

あぁ、また自分の所属する企業イメージを落とすような記載をしてしまいました。

この手紙は読んだら破棄してください。塾長の夜神に見つかると、間違いなく減俸が辞職に追い込まれるかもしれないので。正直、塾講師にはちっとも執着はないのですが、貴方たち生徒に対してはそれなりの思い入れがあります。

それぞれに、できるだけよりよい人生を送ってもらいたい、と本気で思っています。

でなければ、しつこいようですが、こんな手書きで手紙なんて書きません。PCで書いた方が読みやすいという方便も使えますし、なにより早い。どんな国の言語でも一度キーボード見ればブラインドタッチでいけますよ。あ、そんなことは聞いていないですよね、失礼しました。
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