時計の針は戻らない

□時計の針は戻らない
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2年前、8月12日



この日、罰ゲームの執行日となった。





『時計の針は戻らない』





メンバーは男子、土方と総悟。



女子は私と、土方の今の彼女。



向かった先はボウリング場。



何故かと言うと、私も土方も(多分総悟も)ボウリングが好きだから。



「負けたら英語の宿題見せないからね」



「は?!てめぇハンデあるんだろうな?」



「あるに決まってるじゃない」



1つ言うなら、ハンデなしに私に勝つのはこの当時、少々難しかった。



なので私が背負ったハンデは普段のスタイル、マイボールとマイシューズではなく、



センターの貸し靴に貸しボールだった。



ボールは特にハンデだった。



女にしては大きい手と、その掌。



けれど、指はボウリングをしている割には細い。



ボールの作りは、指の部分が大きく、掌の部分は短い。



圧倒的に不利だということは分かっていた。



「これで負けたら笑ってあげるから」



「オイ!」



「俺も笑ってあげまさァ、土方さん」



からかわれる対象であることを彼は未だ自覚しておらず、真剣に返す反応が楽しかった。



だから、私と総悟はよく土方をからかうんだ。



その空間が、何よりも好きだったから―――――。








2ゲームの試合結果、1位は総悟だった。



「楽勝ですぜィ」



アベレージが130。



普段なら勝ってるところだけど、やっぱり投げにくいのが災いして私が2位。



土方は3位。



彼女はダントツの4位だったが。



「ハンデあげたのに負けたね」



「情けないでさァ、土方さん」



「煩ぇ!!」



とは言っても自分の性格上、貸さないわけにはいかないらしい。



なかなか損な性格だ。



「・・・はい」



「え?」



「アルファベット解読できるなら見れば?」



「マジで?」



その時の笑顔は、今でも忘れられないくらい嬉しそうで。



今でも鮮明に思い出せるほどよく覚えてる。



私を安心させてくれる、優しい端整な顔。



出来るなら、ずっと見ていたかった。



叶うなら、その笑顔を独り占めにしたかったよ。



ずっと、ずっとその空間にいたかった。



今の私には無理なことだって分かってる。



それでも、私には一生忘れられない嬉しい日だった。



2年前の今日のこと、貴方は覚えていますか?



1年前の今日聞いた時みたいに、ちゃんと覚えていてくれたら、



それだけで嬉しいから。



今の願いは、



昔過ごしたあの空間のことを忘れないでいてくれること。



どうか、私の大切な想い出を消さないで―――――。



2008.08.12

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