時計の針は戻らない
□時計の針は戻らない
1ページ/1ページ
今日は楽しい遠足。
って言いたいけど、初っ端から嫌なものを見て泣きそうになった。
だから嫌だった。
何でわざわざ合同にするの?
クラスが違うから安心していたのに。
『時計の針は戻らない』
1つ前の席では、仲良く座るカップル。
私が大好きな土方と、その彼女・・・・・。
見たこと無いぐらいに甘い、優しい笑顔で愛おしそうに見ながら自分の彼女と何かを話している。
時折、彼の大きな手が彼女の頬を撫でる。
羨ましいぐらいに細くてしなやかな指が、私の大嫌いな彼女に触れる。
私を裏切った、信用も出来ないし、したくない彼女。
そんなことを知らないことを土方は、人の気持ちも知らずに嬉しそうに微笑む。
何で気付いてくれないの?
私が努力してやっと手に入れた彼の友達としての笑顔を、私は盗られた。
その子、アンタに告白された時、どういう気持ちで承諾したか知ってる?
『好きなわけじゃないけど、付き合ってもいいかな』
その言葉を聞いた時、どれほど泣いたことか。
どれだけ悔しかったか。
4年以上もアンタを好きな私には、そんな言葉はショックでしかなかった。
『協力するからね』
そんな言葉、ただの嘘だったの。
ちっとも、協力なんてしてくれなかった。
そんなことがあったなんて、アンタは一生気付かない。
それが苦しくて、息が止まりそうで・・・・・。
私の努力は認められなくて。
何の努力もしなかった彼女に軽々と奪われて。
どれほど惨めだったか分かる?
放課後になったらひょっこり扉から顔を出して、手招きでアンタを読んでは、視界に入るところで得意げに話す彼女に、それを気付きもせずに笑顔で優しい笑顔で迎えるアンタが嫌いだった。
お願いだから、忘れさせて。
もう、これ以上私の心に入ってこないで!
本当に、嫌いにならせて・・・!
ただの友達に戻って・・・!!
もう、見たくないの。
想いたくないの。
苦しくて涙しか出ない恋愛は、もうしたくない!!
「一緒に遊びやしょう?」
何も聞かずに優しく接してくれる。
私、総悟みたいな人を好きになればよかった。
総悟といる時は、土方のこと、忘れられる。
でも、それもほんの一瞬だけ。
すぐに辛い現実に引き戻される。
総悟を1番に好きになれば、苦しい気持ちから解放されるんだよ?
それなのに、何で私は土方じゃないとダメなの?
散々苦しめられて、散々辛い想いを重ねてきたのに。
そんなに傷つけられたのに、嫌いになれない私は、きっとバカだ。
諦められない私は、愚かだ。
泣いた心の叫び。
アンタ以外の誰に届いても、意味がない。
2008.06.25