†Una memoria†
□*Un funfair*
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回れ回れ煌めくメリーゴーランド。
ピエロに風船を貰おう、赤い赤い風船。
傾く月だけが見ていた
あの夜の初めての秘め事。
†Un funfair〜モバイルパーク〜†
あの再会から、彼らは幾度となく会っている。まったく違う人生を歩んだ二人はお互いの話を聞いているだけで新鮮だった。
今日も学校の帰り道だった彼を呼び止めてカフェでおしゃべりに勤しんでいた。ふと、通りへと向けられた太陽の瞳が伏せられる。訝しげに見ていると、その視線に気づいた彼が恥ずかしそうに俯いた。
「どうしたんだよジョット?」
困ったときのクセなのだろうか、トレードマークの黒髪をかき上げながら尋ねると金の髪が揺れ、視線を再び通りへと戻した。
「この先に…」
そこまで言い頭を横に振る。その品の良い仕草に思わず目を奪われる。だが、伊達に最近よく話をしていた訳ではない、少しづつだが黒髪の彼にも、この少年が醸し出すオーラのような物に免疫がついてきている。言いよどんだ言葉の先を促す。
「Un funfairがこの先に来てるの知ってる?」
金の瞳を輝かしながら彼は言った。彼が言った【Un funfair】とは所謂、移動遊園地だ。数ヶ月に一度ここパレルモにもやってくる。そう言えば、朝からチラシが撒かれていた事を思い出す。
「知ってるも何も、行き飽きた位行ったぜ」
少し肩を竦めながら答えると、金の瞳が残念そうに下げられる。しかし直ぐに視線を戻して微笑んだ。
「そうだよね」
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