短編1
□bird cage
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『世界』には二人しかいなくて。ただ、それだけが『すべて』で。
何を言われようが、周りなんか関係なかった。
その『世界』を映す水たまりを、笑ってよけて、踏みつぶして。
そうして僕らは走り出す。雨の中を、ただひたすらに。
僕らは完璧だった。
疲れ果てた君は、僕を置いて夢の中へ歩き出す。
僕はいつでも置いてけぼりだった。
起きてよ。
薄く目を開けた君は無邪気に、「明日は晴れるかな?」なんて。
すべては夢の、中。
僕を呼ぶあの声も
(雨の音がかき消えて)
柔らかな濡れた髪も
(それじゃあね、と正反対に)
もう聴くことも触れることもできなくて
(たどり着いた場所でぽつりとさみしくなった)
「ありがとう」と告げて。
今日からの君と離れた。
会うこともなくなった僕らには。
二人の世界しか、なかった。
一人ぼっち side:G