宝物

□duplicate key
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俺には年下の恋人がいる。

大学の同じ学部の後輩である坂田に告白されて断り、それでも何度も告白されて。あまりの粘り強さに根気負けをした。なんだかんだ付き合って半年近くになる。

女にモテると聞いていたしどうせすぐに諦めるだろうと思っていたのに、意外にも坂田は一途だった。

どうしてここまで俺なんかのことを、と思うほどに俺は愛されている。惚気に聞こえるかもしれないが、事実だ。何故なら坂田が俺を見つめる眼差しは、やつの好む菓子の類いより甘いのではないか。なんて。そんな馬鹿なことすら考えてしまう程だからだ。

半年近くもの間、坂田のような男にべたべたに甘やかされ愛されて。好きにならない方がどうかしている。そんなやつがいるならいっそ殴ってやろうか。いや、だからと言って惚れられても困るのだけれど。

まぁ詰まるところ、俺も坂田に惚れてしまっている。ということで。

だけどその気持ちを坂田本人に伝えたことはなく、付き合っているにもかかわらず未だやつは片想いだと思っている。



今日は、そんな坂田の誕生日。

自宅で柄にもなく料理なんて作りながら坂田が来るのを待っていたのだが。ふと、机の上で照明に反射してきらりと光ったモノに視線を向けた。この家の鍵であるそれは、俺のモノではない。今から訪れる坂田への誕生日プレゼントとして渡そうかと考えている、言うなれば合鍵だった。

気持ちすら伝えられていない坂田には当然言ってはいないが、俺は坂田の笑った顔がとても好きだ。ふわりと笑う顔も。腹を抱えてくしゃくしゃにして笑う顔も。照れたようにはにかむ顔も。困ったように笑う顔も。

好きで、好きで。

あの鍵を渡して、俺の気持ちを伝えたならば。坂田はどんな顔をしてくれるだろうか。

もしも、幸せそうに笑って抱き締めてくれたなら。それだけで、きっと俺までつられて笑ってしまうんだ。


だから。


 ─ピンポーン─


さあ早く、見せてよ。
だいすきなその笑顔を。










++オマケ++


─ピンポーン─


「開いてるから入ってこいよ」
「おじゃましまーす。もう、土方センパイ不用心すぎ」
「だってお前が入れねぇだろ」
「でも危ないってば」
「めんどくせぇ」
「だーめ」
「………」
「可愛い顔で睨んでもだめ!」
「じゃあ、コレやるよ」
「なに、ってコレ…!」
「いつでも好きな時に入ってこいよ」
「っ、せんぱ、」
「うわ!ちょ、お前泣くなよ」
「だって…ぐすっ」
「坂田。好きだよ」
「え…」
「誕生日おめでとう」
「せ、せんぱいぃ〜」
「ははっ、きったねぇカオ」
「ひどい。でも好き」
「ほら。笑えよ。俺、お前の笑った顔が好きなんだよ」
「っ、はい…!」



end.

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