宝物

□光を放つ惑星
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「ねえ、海行こうか」


夜の海は波の音だけを置いて其処にある筈の水は闇に混ざった。
何もない街頭もすれ違う人もモノもない暗闇をザクザクという足音と共に歩き回る。

「あ、土方くんアレ見て」

夜空を指指して見上げれば赤くぼんやりと光を放つ星がひとつ、その隣――斜めに輝く一際明るい一等星

「あ、アレが天秤座じゃね?」
「正義を計る天秤、ね。俺は正義なんて計りたくねえよ」

俺が天秤を持たされて、この世界の善と悪を計らなきゃいけなくなったときに俺達を計ったら間違いなく善ではないのだから。

「俺達に未来はねえよ」
「、ああ。」

男でいる限り永遠なんて存在しないこと、わかってんだ。例え俺が女でも永遠なんてないんだ。

「俺がゼウスならお前を天に昇らせたりしねえよ。俺がゼウスならガニュメデスみたいに連れ去ってずっと傍に置く」

楽園から連れ去って恨まれてもいいんだ。他のひとに奪われるくらいなら自分が自由を奪ってあげたい。いつも傍に置いて、片時も離れない。

「ばーか、俺は此処にいるだろ」
「俺達いつまで一緒にいれるのかな」
「ずっと、ずっとだろ。形が変わっても一緒にいれるだろ?恋人じゃなくて友達としてでも」

自然に繋がれた指先が俺達の体温を溶かしている。
このまま指先からゆっくりお前に溶けて、ひとつになれたら離れないでいれるのに



光を放つ惑星





俺の立つ此処が深い地の底でお前が地上で笑っていたら俺はお前を地下になんか連れてこうなんて思わないよ。お前には太陽の下で笑って欲しいんだ。


そんなこといえばまた振り出しに戻ってしまうけど、例え俺達の関係が変わっても一番に願うのはお前の幸せ

幸せのカタチは変わってしまう。
知ってるから、いまだけは時間が止まればいい

指先から伝わる熱を少し強く握り締めた。


(この手はまだ、離せない)



波の音が闇に響いて其処にあると知らしめる。
出来るなら何光年も先まで続く関係でありたい。



end.

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