宝物
□外見より中身とか嘘
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最悪だ。
今日は非番だったはずなのに、どうして攘夷浪士なんぞに狙われなくちゃいけないんだ。しかも足を斬られるなんて、普段ならありえない失敗。
「…くっそ」
ずきりと痛む足は、多分歩けそうに無い。
ち、と一つ舌打ちをして、とりあえず路地裏からは抜け出そうと思った、その矢先。
「あれ、大串くん?」
…本当に今日は最悪だ。
「ったくよー、お前銀さんに感謝しろよ? 俺が通りかかってなかったら今頃野宿だぜ?」
「るっせーんだよ。誰も頼んでねェだろうが」
「テッメ、降ろすぞコノヤロー」
ブゥゥゥン、とどこか間の抜けたような音でスクーターが走る。
自分を乗せて走るのは、天敵である坂田銀時。こいつの前だとどうも調子が狂うから苦手―――もとい、嫌いなのだ。
ただ今日は、乗せてもらっている手前そんなこと言えないのだけれど。
「ここ曲がんだろ」
「ああ」
銀時のほうも口を開けば喧嘩になることが分かっているのだろう。必要最低限のことだけを訊いて、あとはもう何も言おうとはしない。
それにまた何だか苛ついたけれど、自分も子供ではないのだ、そのほうがいいに決まっている。
「…掴まっとけ」
どことなくやりきれない思いを抱えつつ、その言葉に銀時に抱きついた。こんなことしたくないのは山々だが、こうでもしないと転げ落ちるのは先程証明済みだ。
多少は気を遣ってくれているのだろう、ゆっくりとスクーターが傾き――
――目の前にいたのは、大型トラックだった。
ぱちり、と目を開いた先、真っ先に見たのは真っ白い天井。病院だろうか。やけに薬品の匂いが鼻についた。
ゆっくりと体を起こすと、体中がやけに痛む。
そういえば、あのトラックに撥ねられたんだったか――。ぼんやりと記憶を探り、冷静に考えられるのは自分の性分だろうか。いや、こんな事を考えている分、逆に混乱しているのかもしれないけれど。
隣のベッドを見れば、布団に包まって誰かが眠っている。状況的に考えれば銀時だろうと考えて、文句の一つでも呟いてやろうとした、その時。
「…?」
遠くから、たたた、という軽い足音が聞こえた。
音からして、大人のものではない。自分なら来るとしたって隊士達の誰かだろうから、誰かの見舞いに来た子供が走り回っているのだろうか。
そんなことを考えていると、病室の扉ががらりと開いた。
「銀ちゃん!目が覚めたアルか!」
「良かったー、心配したんですよ」
入ってきたのは、銀時と共に万事屋を営んでいる子供達。
ああ、だから足音が軽かったのかと考えて、はたと気づく。
…なんでこの子供達は、自分の方を見ている?
「…銀さん?」
「私たちのこと分かるカ?」
心配そうに自分を覗き込む子供達の瞳。
その瞳に映っているのは――
「…え?何コレどういう事?」
坂田銀時、その人だった。
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