宝物

□子守唄に君を想う
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※『GIOIELLO』様にあるお話「止まない雨と君の傘」「今はまだ気付かないままで」の続きです






傘を返しに行ったものの降りだした雨に結局また傘を借りて帰ったあの日から、更に一週間。



ニートもどきの万事屋の家にそう何本も傘なんてないだろうから早く返さないといけない、とは思っているが。

何故かあの日からふとした時になんとも思ってなかった、寧ろ大嫌いだったアイツのことを考える時間が増えたことに戸惑い、ずるずると先延ばしにしていた。

(明日こそは、)

そう思うだけで心に浮かぶ嬉しいような不安なような、複雑でもやもやとした気持ちが何なのか気付きたくなんてなかった。けれど。


「好き…なんだろうな」


アイツのことを考える時間が増えた理由も、傘を返しに行きたいけれどその反面でもったいないと思う理由も、好きだからだとしたら辻褄が合う。不本意ながらも認めざるを得なかった。

万事屋が好きだ。

そう認めてみると案外すとんと気持ちがまとまった気がする。




しとしとと今日も降る雨。

少し気持ちが軽くなったこともあり、子守唄のようなその音に耳を傾けているうちに段々と瞼が重たくなってきた。


「…土方くん?」


聞き覚えのある心地よい声が耳に届いたのを最後に、完全に意識を手放した。




時間にして一、ニ時間だろうか。目を覚ました時、雨は止んでいた。

夢の中でずっと頭を撫でられていた。髪をさらりと梳くように触れる優しい手の持ち主は誰だったのか。

まぁ所詮夢だとぼんやりとした頭を覚醒させる為に起き上がると、ぱさりと毛布が落ちた。自分が眠っているうちに掛けられたであろうそれは、恐らく近藤さんか山崎が掛けてくれたのだろう(総悟なら危険を感じて気配で起きる)。

ふわり、まだ残る雨の匂いに混じって毛布から微かに甘い匂いがしたのはきっと俺の願望による気のせい。夢の中でずっと撫でていてくれた手がアイツだったらいいのに。そんな恥ずかしいことを願う自分に驚いた。

(頬が、熱い)

こんなことで明日傘を返しに行けるのだろうか。

そっと頬に手を当てながら、雨上がりの空を見上げた。



end.

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