宝物

□夢の恋人
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『  好きだよ』

そういって抱きしめた身体は見た目以上に細く、小さかった。
そしてふわりと香るにおいはシャンプーの爽やかな甘さ、自分の肩ほどまでしかない身長と真っ黒なショートヘアー、そこから覗く肌は白く滑らかだった。

『銀時、好き』

耳元で返される言葉にハッとして視線を合わせれば照れたように笑う彼女
(これが幸せっていわずに何を幸せっていうんだろう!)
もう一度強く抱きしめて彼女にキスしようとした瞬間、

pipipipipipipipipi

鳴り響く機械音で無理やり目を開ける。
もちろん隣には誰もおらず、抱きしめていた掛け布団を弾き飛ばす。

「…夢かよ」

俺の声は誰に聞かれることも無く未だ鳴り止まない機械音に紛れた。
(にしても彼女、かわいかったよなー)
ほんとなんかいい匂いしたし
華奢でかわいらしい女の子って感じ
銀さんの理想ストライクだったのに、夢かよ…
醒めやらぬ余韻に浸っていれば乱暴に開け放たれるドア
そして飛んでくる怒鳴り声は高杉だ。

「うっせーぞテメェ!死ね!」

声と共に届いたのは嬉しくもなんともない蹴りの一撃
寸前でそれを避けたら哀れにも俺の目覚まし時計を高杉の蹴りが捕えご臨終なさった。
早くメシ食えクソ天パ、かわいさの欠片もないセリフとともに高杉は部屋を出て行き俺はようや活動を始めた。



*

「遅いぞ銀時、早く座らないか」
「テメェの米はテメェでよそってこい」
「はっはっはっ金時はお寝坊さんやのー」

まさに三者三様の言葉に彼女だったらなーと妄想しつつ席についた。
目の前で繰り広げられる争奪戦以上に夢の彼女が気になってしかたない。
かわいいよなーやわらかそうだったし、あの白い肌に噛み付きたい。
あんなに照れながら見つめられたら銀さん理性が切れちゃうからね。
あーでもあの子とならいいいかもなー
いきなりニヤニヤしだした銀時を見た三人が「頭でも打ったか」と哀れに思っていた事を銀時は知らない。




「ちっくしょーアイツら死なねえかな」

ガサガサと両腕にひっかけたビニール袋からは野菜やらジュースやらが詰め込まれている。
正直腕が痛い。ちぎれそうなほど痛い。
ちらりと指先を見れば重みのせいで青白く変色している。
(ちくしょう、彼女のためならまだしもあのクソ共のためかと思うとイライラしてきた)

あの子の耳舐め回したい。
あの子の照れた顔がみたいよー
体中を舐め回したらどんな反応するのかなあ
涙目で睨まれてもかわいいだけだよなー
それともかわいくおねだりとか?
どうしよう俺の彼女かわいすぎる!
今夜は彼女を寝かせねーな!

今夜の彼女をおもい浮かべ、銀時はニヤリと笑った。




*

『銀時ぃ、妊娠した…』

不安そうに顔を伏せる彼女と無理やり目線を合わせれば泣きそうな顔が見える。
(かわいすぎる!)
破壊力抜群の表情に前かがみになりそうなのを必死でこらえ、結婚しよう、と囁けば抱きついてくる彼女
堪え切れずおもいっきり押し倒せばガンッと夢から強制的に覚醒される。
どうやら壁で頭を打ったようだ、眠気が一気に飛んだ。
(いいとこだったのに!)
惜しいことをしたとあたりを見渡せばどうやらもう夕方なようだ。
(眠気も飛んだことだし、アイスでも買いに行くとすっか。)



自動ドアが開くと同時にひんやりとした冷気が流れ込み、体温を一気に下げていく。
その心地良さに快感を覚えつつもアイスコーナーへ向かう
そこにはすでに先客がなにやら真剣にアイスを選んでいる様子だ。
ちょっとすいませーん、と軽く声を掛け目当てのイチゴアイスの手を伸ばす。
チラッと先客の横顔を盗み見れば、それは彼女とそっくりな女の子
ああああああ!と声を挙げればビクリとこっちを見る彼女に「あのさ、銀さんと付き合わない?」と問いかけてみる。

「、俺、男なんだけど」
「……は?」

聞こえた言葉に間抜けな声が出た。
男?
よくよく見てみれば彼女とそっくりさんは男のようだ。
しかし彼女同様に白い肌、ショートカットの黒髪、香るにおいは爽やかなシャンプーのようだ。
それになにより、綺麗な顔をしている。
男にしておくにはもったいないような綺麗な顔

「それでもいーよ、付き合わない?」

ニッコリと下心を含んだ笑顔で言えば勝手にしろよ、と素っ気ない返事

「…………」

それは、つまり、オッケー、てこと?
ようやく飲み込めた返事に舞い上がるように彼にキスをした。

「な、なにすんだ、ばかっ!」
此処がコンビニだってことわかってんのか?!

羞恥からか白い肌を赤く染めた彼は夢の彼女にダブって見える。
彼女とは違い少々じゃじゃ馬のようだが、それを自分好みに育てるのも興奮する。

「そんなのはどうでもいいよ、ね、名前は?」
「土方、十四郎」
「そっか、土方くんこれからよろしくね?」

え、あ、おう、と引き気味に頷かれたがそんなのは気にしない。
これから楽しもうね、と笑顔でいえば頭に?を浮かべる土方くん

「とりあえず、ナースは絶対。
それとスーツとチャイナドレスでしょ
あと浴衣もやりたいよね
それに拘束も目隠しも絶対条件だから」
「…なんの話だ?」
「え、プレイの話だけど」

答えに驚いたのか無言になった土方くんに「そういえば土方くんってアイスプレイとかもいける子?」と聞けば「この、変態があああ!」とアッパーを食らった。
ベキッという音と共に繰り出されたアッパーに興奮したが、問題はそこではない。

「変態じゃない!男の浪漫だ!」

声高らかにコンビニで宣言すればついてけないと言わんばかりに溜め息を付かれたが
(誘ってるようにしか見えねー)
もう銀時の脳味噌はバラ色に染まったように土方との妄想を繰り広げている

「ね、土方くん耳舐めさせて?」
「死ねよ変態」


土方の苦労はこれからが本番のようだ。



end.


***

『ほしぐい』のまき様の書かれる変態銀さんに一目惚れして、リクエストさせて頂きました。
変態銀さんバンザイ。


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