過去拍手

□過去拍手1
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瑠樺が急に家にやって来たのは午前3時。

いつもなら、誰であっても事前に連絡なきゃ基本は家に入れない。

だって、俺常識知らないヤツ嫌いだし。

でも、インターフォンに映った瑠樺の様子はどこかいつもと違くて、


…ほっとけなかった。


柩くんのバンド仲間だから?

明希の友達だから?

それとも…、


やめた。


これ以上考えたって、時間の無駄だ。

だって答えはずっと前から出てるんだから。





…でも、瑠樺には咲人くんがいる。

瑠樺は俺が知らないと思ってるみたいだけど、知ってるよ。

瑠樺が咲人くんと付き合ってるの。

別に引かないし、むしろお似合いだと思う。

瑠樺が咲人くんとの関係に満足してるなら、俺はそれでいいと思う。

だから、今の俺と瑠樺の「友達」の関係を崩しちゃいけない。

とりあえず、玄関の前でずっと待たせたままじゃ悪いし、玄関まで行ってドアを開けると…、



グイッ!!




ドアを開けた手とは反対の右腕を勢い良く捕まれて、あっという間に瑠樺の大きな腕の中。


バタン、


少し遅れて閉まったドアの音が、やけに遠くに聞こえた。




「る…、か…?」




間違いなく俺の声は震えているだろう。

だって、今の友達の一線は越えちゃいけない。



いや、越えさせちゃいけない。


「…、るか…?」




やっぱり名前を読んでも、瑠樺はただ俺を強く抱き締めるだけで、全く返事がない。


きっと、瑠樺にとってよっぽど辛いことがあったんだろう。


だけど憶測だから、瑠樺の顔を見て確かめようと思っても、今の抱き締められてる状態じゃ、とても瑠樺の顔なんて見れない。

今まで瑠樺に抱き締められて、成されるがままになってた右腕と左腕を瑠樺の胸に押し当てて、瑠樺の顔を見ようとすれば、


ぎゅうぅ



一層俺を抱き締める力が強くなった。



「…、るか…?」







「……、わりぃ。

…今だけはこのままでいさせて。」




そう言って、瑠樺は俺を抱き締める力を更に強くした。

正直、呼吸するのもちょっと大変なくらい。




だけど、こうやって力強く抱き締められてる瞬間が一番幸せ。




多分瑠樺は、俺が瑠樺のこと好きって言ったら信じないでしょ?



でも、俺が瑠樺のこと好きって言うのは本当だよ。


だけど、俺は瑠樺の笑顔を消したくないから、絶対にこの気持ちを言ったりはしない。

瑠樺の隣に俺が居なかったとしても、瑠樺には笑ってて欲しい。




でも、一つだけ俺のわがまま、





『今この瞬間だけは俺のものでいて?』
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