短編

□元気におはよう!
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ここは西浦保育園。
元気いっぱいの子供達が通う素敵な保育園です。

朝早いこの時間、まだ園児たちは来ていないようです。

もうすぐ来る園児たちを迎えるため、優しい先生たちが玄関に集まって来ました。




保育園の前に白い車が止まります。

どうやら一番乗りの園児が到着したようです。



「せんせー!おはよーございまーす!!」



白い車のドアから飛び出して来たのは、西浦保育園の中で1番やんちゃで元気な男の子。田島悠一郎くんです。



「おはようございます、悠くん」



悠一郎くんを出迎えたのは、もも組の先生、花井梓先生です。
悠一郎くんはとっても嬉しそうに笑いながら駆けてくると、そのまま花井先生に飛び付いて白いエプロンをぎゅっと握りしめました。



「花井せんせー!あそぼー!!」

「まだ来たばっかりだぞ?最初にお部屋に荷物を置いてきなさい」



元気いっぱいに花井先生のエプロンを引っ張る悠一郎くんに、花井先生は困ったように悠一郎くんの頭をなでなでしながら言いました。
悠一郎くんは花井先生のことが大好きなので、先生の言うことを素直に聞いて、はーい、とお返事をすると、もも組のお部屋にトテトテと走って行きました。



「おはようございまーす」

「ございまーす!」

「勇人くん、文貴くん。おはよう」



賑やかな悠一郎くんが走って行ったあとから、栄口勇人くんと水谷文貴くんが仲良く手を繋いでやってきました。

二人はとっても仲良しで、何をするにもいつも一緒なのです。



「阿部せんせー!」

「どうした?」



パタパタと勇人くんと文貴くんが阿部隆也先生の所まで走ってきました。
たんぽぽ組の勇人くんと文貴くんがバラ組の阿部先生の所へやって来たので、阿部先生は不思議に思って首を傾げました。



「あのね、幼稚園の前でね、廉くんが転んでたの!」

「いっぱい泣いててね、せんせー呼びに来たの!」



勇人くんと文貴くんのお話を聞いた阿部先生は少し怒ったように眉を寄せます。
そんな阿部先生を見て、勇人くんは不安そうに阿部先生を見上げます。



「廉くん怒られるの?」

「廉くん怒っちゃダメだよー!」



勇人くんの言葉に文貴くんは驚いたように目をおっきくして、阿部先生の水色のエプロンをひっぱりました。



「怒らないよ。教えてくれてありがとうな」



阿部先生は苦笑いしながら勇人くんの頭をポンポンと優しく撫でます。
勇人くんは嬉しそうに笑うと、良かったねー、と文貴くんと手を繋いだままたんぽぽ組の教室に駆けて行きました。



「入口んとこまで行ってくるな」



勇人くんたちを見送ったあと、阿部先生は同じバラ組の篠岡先生に声をかけました。
篠岡先生が笑顔で頷くと、阿部先生はすぐに玄関から慌てて飛び出して行きました。

平気そうな顔をしていた阿部先生ですが、本当は廉くんをとても心配していたのです。



「じゃあオレは救急箱取って来るな」



慌てた阿部先生は、廉くんのケガを治すための救急箱をすっかり忘れてしまっていました。
それに気付いた花井先生はしょうがないなぁ、と肩を竦めて先生達のお部屋に向かいます。

すると、もも組からパタパタと足音が聞こえて来ました。



「せんせー!置いてきたー!!遊ぼっ!」



足音の正体は悠一郎くんです。
悠一郎くんは、花井先生の言い付けを守って荷物をもも組に置いて来たのです。



「ごめんな、廉くんが怪我してるから先生も手当てしに行かなきゃいけないんだ」

「え!?廉ケガしてんの?俺も行く!!」



悠一郎くんと廉くんはとても仲良しなので、悠一郎くんは心配でたまりません。
花井先生が救急箱を持って来ると、悠一郎くんは花井先生のエプロンをギュッとにぎりしめました。



「じゃあ転ばないように手を繋ごう」

「うん!」



花井先生が手を差し出すと、悠一郎くんはエプロンから手を離して先生の手を小さな手でしっかり掴みました。



「後は頼むな」

「うん。よろしくね」



篠岡先生に後のことをお願いすると、花井先生と悠一郎くんは廉くんがいる入口へ向かいました。







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