短編

□REG
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10―BELIEVE―






「――どこだ!?どこにいるんだ!?」

声が聞こえる。
――が探してる。

此処だよ。此処にいるよ。

「なんで…!!なんで俺だけ…!!!」

声が出ない。――の声が遠くなる。
待って。行っちゃ駄目。
そっちに行ったら戻れなくなる。

「…俺のせいで…俺があんなこと言い出さなきゃ――は…」

違うよ。――のせいじゃない。
ここにいるんだ。気付いて。

黒い光が

あいつだ。駄目。ソレに近づいちゃ駄目!!















「ここに来たのは君達が初めてだよ」

光の先には、白い世界が広がっていた。
その世界の中心に佇んでいたのは、白いワンピースを着た女の子だ。
背中を向けて立ちすくむ少女は、こちらをちらりとも見ない。

その後ろ姿は、あの街で出会った白い少女に似ているけれど、あの少女よりも少し背が高いようだ。

「あの子に会えたんだね」

「あの子って、崎山って人の事?」

さらりと黒髪が流れると同時に、少女が振り返った。
まだ幼さが抜けていないその顔は、街で会ったあの少女のものだが、そことは違う場所で見たことがある気がする。
どこか憂いを帯びたその瞳は、淡い光彩を放っていて幻想的な雰囲気を醸し出している。

「君達にお願いがあるんだ」

問いには答えず、少女は淡々とした口調で続けた。
真っ白な世界に、微かな影がさす。

「君が疑った事で、この世界の秩序は崩れ始めた」

白い世界が灰色に染まり、黒へ沈む。
気付いているのかいないのか、少女は至極落ち着いた様子で続ける。

「エンドゾーンも崩れた。あそこはもう終わりの場所じゃなくなった」

背後で、何かがうごめいた。
アレが追って来たのだ。

「エンドゾーンに行って。君達ならこのゲームを終わらせられる」

混沌の黒が、少女の足元に広がった。
少女はそれにちらりと視線を落とすと、小さく笑った。

「あの子を…トオルを連れて帰ってあげて。あの子はまだ間に合うから」

少女の腰辺りまでが黒に覆われた。
今いるこの空間が消えていくのを感じる。
少女は泉達に向かって小さく微笑んだ。
胸元まで黒に沈んだ。

「トオルに伝えて。―――――」

それはどこか、哀しい笑顔だった。















走っていた。

二人でずっと。

この先に出口があることを疑わなかった。

それこそがREGの罠だとは気付かず、ただひたすら信じて走った。

アイツは、

アイツだけは元の世界に帰したいと思った。

興味本位で始めた悪魔のゲーム。

それにアイツを巻き込んだのは俺だ。

だから、アイツだけは………



















戻って来た黒の世界。
まるで夢物語のような出来事だった。

けど、それが夢なんかじゃないことは自分達が1番よくわかっている。

今ならわかる。
行かなければいけない場所が。
やらなければいけないコトが。

背後から、うごめく何かが近付いて来る音がする。

「浜田」

「ああ、行こう」

呼び掛けた声に返って来た言葉に小さく笑う。
声だけで相手の感じていること、考えていることがわかるというのは何とも不思議な感じだった。

同時に走りだす。

行き先は二人ともわかっている。

顔のすぐ傍を、黒い悪魔の手が通り過ぎていくのを感じた。
スピードは落とさない。それらがもう害あるものでなくなったことは理解していた。

黒が密集し始めた。エンドゾーンが近いのだ。
始まりの黒の元に、終わりがある。
そこにはきっと、崎山がいる。

空気の密度が上がった。
抵抗さえ感じる空気の層を押し抜けて、俺達はその黒を走り抜けた。







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