短編

□REG
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02―STARTED―





「あれー?確かここに置いといたと思うんだけどな…」

「お前こんな狭い家なんだからゲームの場所くらい把握しとけよなー」

浜田に出して貰った麦茶を飲みながらガサゴソとまるで家捜しのようにゲームを捜す浜田を見ていた。

「泉も手伝えよー。お前がやんだろ?」

浜田の言うことは最もだ。ヒトサマん家でゲームをするからには準備くらいはすべきなんだろう。
仕方ねぇなぁ、と呟きながら立ち上がろうとした時、浜田のベッドの下に見覚えのある黒い機器が見えた。

「ここにあんじゃん」

「え?あ、ホントだ」

テレビ周りを探していた浜田が見付けられないのも当然だろう。
だいたい、どうしてゲーム機がベッドの下に潜り込むような状況になったのかが謎だ。

「データ吹っ飛んでたりしたら殴るぞ」

早速テレビにセットしながら言えば、浜田はヒドイッと叫びながらもお菓子を取りに台所へと立った。
プレイヤーを開けて中に入れっぱなしだったディスクの状態を見る。
虹色の光を反射させるディスクの裏面は綺麗なもので、プレイに支障はなさそうだ。
ディスクを戻して起動する。
ディスクを読み取る重低音が響き、真っ暗だったテレビ画面が光りだした。

プレイ画面になるまでには少し時間がかかることはわかっていたから、ほんの少しだけ目を離していた。そろそろかと思って目をテレビ画面に戻すと、そこに映っていたのは見たこともないオープニング映像だった。

「…なんだこれ?」

赤い画面に黒い文字が浮かんでいる。
シンプルな割に妙な不気味さを持ったその画面に浮かび上がる文字は『REG』というタイトルロゴ。
そのタイトルを見た瞬間、昼間の会話がフラッシュバックのように思い出された。

「浜田!」

「ん?どした〜?」

切羽詰まった呼び声に答えたのは気が抜けるくらい呑気な声だ。
お菓子を盛った皿を持った浜田が台所から部屋へと戻ってきた。その視線が俺からテレビへと移った瞬間、浜田の表情が固まった。浜田の視線はテレビ画面にくぎづけになっている。

「……REG……」

呟いた浜田の声に反応するかのように、テレビ画面が突然光を放ち出した。
まがまがしい赤い光が部屋に満ちていく。
眩しさに思わず目を閉じると、赤い視界が途端に黒に変わった。

「泉!!」

耳元で浜田の声が聞こえると同時に、腕を強い力で引っ張られる。
宙に浮く感覚が体を襲う。
まるで濁流に飲まれたように方向感覚がなくなってしまった。ただ浜田が腕を掴む感触だけが、自分を現実へと繋ぎ留めているかのようだ。

ぐるぐると体の周りの重力が変化して、いろんな場所に圧力が掛かってくる。体中をまぜ返されるようで酷く気持ちが悪い。
次第に遠退く意識の中で、誰かの叫び声が聞こえた気がした。



そして意識はふっつりと途切れた。




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