短編

□REG
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13―REPEATS―




真っ白な世界

一点の汚れもないそこは酷く眩しくて、目を開けていられなかった。

声を出しても答えるものはなにもない。

誰もいない

一体どうして自分はこんなところにいるんだろう。

どこからやってきたのかも覚えていない。

ふと、音にはならない声が聞こえた



『つまらない』

なにが?

『退屈だね』

どうして?

『もっと、おもしろい事が起こればいいのに』

オモシロイコトって?

『事件なんかがあれば面白いな』

ジケン?

『みんな行方不明になっちゃう、とか?』

ユクエ、フメイ

『一人じゃ面白くない』

『たくさんいなくなったら?』

『おもしろいね』

『そんなデキゴト起こらないかな?』

『ゲームとかであると面白いよね』

みんないなくなる、ゲーム



声がいなくなった。

また独りになった。




さみしい




さみしいよ




ねぇ、オモシロイコトしたら、来てくれる?

ミンナガイナクナルゲームを作ったら、遊んでくれる?

一緒にいてくれる?

独りじゃさみしいから、二人で来ていいよ。

そうしたら、誰もさみしくないよ。

みんな楽しいよ。



さあ、みんなで遊ぼうよ
















「…い……み…!泉!!」

目を開けると、見慣れた天井が視界に入り込んで来た。
どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。

「あー…今何時?」

「6時」

浜田の家に来たのが4時過ぎだったから、1時間くらいは寝ていたのだろう。
身じろぎすると、手から落ちたコントローラーが足に当たった。
テレビに視線を移せば画面にはGame Overの文字。
またあのラスボスを倒せなかったらしい。
いつもならCONTINUEの文字が踊る画面に写るその言葉に、なんとなく心臓が嫌な音を立てた。

「夕飯どうする?」

食ってくか?と尋ねる浜田の顔を見たら何故だかホッとした。
ホッとしたら朝のお袋の言葉を思い出した。

「そういや今日晩飯浜田も呼べって言われてたんだ」

「え、マジで?いーの?」

嬉しそうに顔を輝かせる浜田は犬に似ていると思う。
どうにもクリア出来ないゲームの電源を落としながらおー、と気のない返事を返す。

「部活ない日くらいしかゆっくり晩飯食えねーだろーからってさ」

「うわー!マジおばさん女神様!」

「キモいことゆーなよ」

ちょうどFFのケースがすぐそこに転がっていた。
次はいつ来るかわからないので、とりあえずちゃんと片付けておこうかと希少な考えが浮かぶ。

「……あれ?」

ゲーム機の蓋を開けると、そこにあるはずのディスクがない。
からっぽのゲーム機を前に、頭が混乱してくる。

「泉?どーした?」

ゲーム機の前で固まっている俺の背後で浜田が不思議そうな声を上げる。

「俺、ゲームしてたよな?」

「ん?なんだよ泉まだ寝ぼけてんのかー?」

困ったように笑う浜田に背筋が凍った。

違う。何かが違う。

「そんなことより早く泉ん家行こうぜ」

カラカラと笑う浜田の少し長めの髪が揺れる。
細めた目の奥で、光彩の薄い瞳が輝く。
どこか年には不釣り合いな大人びた表情は、一つ年が上だからなのか、それとも……

「泉ー?行こうぜー?」

「お、おう」

違和感の正体が掴めず、玄関へ向かおうとする浜田を慌てて追いかける。

「俺もう泉ん家の子供になろーかな」

おばさん料理うめーし、と明るく笑う浜田が玄関で振り返る。
黒い髪が、電気の光を反射してキラリと暗く光った。
光彩の薄い瞳が、暗く瞬く。

「そしたら俺、泉アオイだよ」

ドクリと心臓が嫌な音を立てた。
あははは、と笑う浜田の声が遠く感じた。

耳元で誰かの笑い声が重なる。










つぎはだれとあそぼうかな




END




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