短編
□mind and mind
1ページ/3ページ
きっかけは、とても些細なことだった。
小さな綻びは時間が経つにつれて大きくなっていき
気付いたら、元のカタチを失っていた。
嗚呼、僕はずっと
君の優しさに甘えてたんだね
mind and mind
Side:SAKAEGUCHI
水谷と口を聞かなくなって、1ヶ月が経つ。
あんなに大きな喧嘩をしたのは、生まれて初めてだ。
そのせいってわけじゃないけど、どんな風に仲直りをすればいいのか分からない。
最初の2週間は、水谷が傍にいないことが何だか落ち着かなくて、授業中も集中なんて出来なくてそわそわしてた。
けど、更に1週間が経って、水谷がいないことに慣れて来て。
また1週間が経ったら、いないことが当たり前になってしまった。
こうやって俺達が築いてきたものなんて、あっさりと風化してしまうんだって気付いた夜、俺は独りで泣いた。
たった1ヶ月。
されど1ヶ月。
君との距離が遠くなるのに、それほど歳月はかからなかった。
このままこの関係も、なかったことになってしまうんだろうか。
1ヶ月前には、一緒に笑ってて。
1ヶ月前には、一緒に話してて。
1ヶ月前には、一緒に泣いてた。
あの時、一体君とどんな風に過ごしていたのか、今の俺にはわからない。
ねぇ、君は今、どこで何してる?
夕暮れ時の屋上に独り、空を見上げる。
赤い夕日の刺さるような光と、包み込むような温かさ。
眩しさに目を閉じれば、夕日が目に滲みたのだろうか、ジワリと目頭が熱くなる。
Side:MIZUTANI
栄口と口をきかなくなって、1ヶ月が経つ。
喧嘩のきっかけは、多分俺のワガママ。
栄口のことが大好きで、好きすぎて。でも俺は自分のことしか見えてなかった。
栄口はあの日、泣いてた。
涙は流れてない。けど、きっと、心で泣いてた。
あんなに辛そうな顔をしている栄口を初めて見た。
あんなに怒ってる栄口を初めて見た。
俺はずっと、栄口に無理をさせていたんだって気付いた。
自分が情けなくて、悔しくて
そのあとも栄口に話しかける勇気が持てなくて、避けて、避けて、1ヶ月。
自分からそう仕向けたくせに、俺の目はまだ栄口を追っている。
栄口にあんな顔をさせた俺は栄口には相応しくないんだ。
だから、離れなきゃいけないんだ。
これ以上近付いたら、俺はきっと栄口から離れられないから。
だって、もう既に俺は、栄口なしでどう生活していたのか分からなくなっちゃったくらい、栄口に依存しているんだから。
だから、もうこれ以上、栄口に触れられる距離にいちゃいけないんだ。
そう決心した、夕暮れに染まる教室で、俺は独り机に腰掛けていた。
会いたい
会えない
触れたい
触れられない
近くにいる俺に気付いて
近くにいても俺に気付かないで
すれ違う想いは
もう、重ならないのだろうか