短編

□mind and mind
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きっかけは、とても些細なことだった。



小さな綻びは時間が経つにつれて大きくなっていき



気付いたら、元のカタチを失っていた。





嗚呼、僕はずっと




君の優しさに甘えてたんだね









mind and mind












Side:SAKAEGUCHI





水谷と口を聞かなくなって、1ヶ月が経つ。
あんなに大きな喧嘩をしたのは、生まれて初めてだ。

そのせいってわけじゃないけど、どんな風に仲直りをすればいいのか分からない。

最初の2週間は、水谷が傍にいないことが何だか落ち着かなくて、授業中も集中なんて出来なくてそわそわしてた。

けど、更に1週間が経って、水谷がいないことに慣れて来て。

また1週間が経ったら、いないことが当たり前になってしまった。



こうやって俺達が築いてきたものなんて、あっさりと風化してしまうんだって気付いた夜、俺は独りで泣いた。

たった1ヶ月。

されど1ヶ月。


君との距離が遠くなるのに、それほど歳月はかからなかった。
このままこの関係も、なかったことになってしまうんだろうか。



1ヶ月前には、一緒に笑ってて。

1ヶ月前には、一緒に話してて。

1ヶ月前には、一緒に泣いてた。



あの時、一体君とどんな風に過ごしていたのか、今の俺にはわからない。



ねぇ、君は今、どこで何してる?



夕暮れ時の屋上に独り、空を見上げる。
赤い夕日の刺さるような光と、包み込むような温かさ。

眩しさに目を閉じれば、夕日が目に滲みたのだろうか、ジワリと目頭が熱くなる。

















Side:MIZUTANI




栄口と口をきかなくなって、1ヶ月が経つ。

喧嘩のきっかけは、多分俺のワガママ。
栄口のことが大好きで、好きすぎて。でも俺は自分のことしか見えてなかった。

栄口はあの日、泣いてた。

涙は流れてない。けど、きっと、心で泣いてた。

あんなに辛そうな顔をしている栄口を初めて見た。
あんなに怒ってる栄口を初めて見た。



俺はずっと、栄口に無理をさせていたんだって気付いた。



自分が情けなくて、悔しくて

そのあとも栄口に話しかける勇気が持てなくて、避けて、避けて、1ヶ月。



自分からそう仕向けたくせに、俺の目はまだ栄口を追っている。



栄口にあんな顔をさせた俺は栄口には相応しくないんだ。

だから、離れなきゃいけないんだ。

これ以上近付いたら、俺はきっと栄口から離れられないから。

だって、もう既に俺は、栄口なしでどう生活していたのか分からなくなっちゃったくらい、栄口に依存しているんだから。



だから、もうこれ以上、栄口に触れられる距離にいちゃいけないんだ。



そう決心した、夕暮れに染まる教室で、俺は独り机に腰掛けていた。















会いたい


会えない



触れたい


触れられない



近くにいる俺に気付いて


近くにいても俺に気付かないで





すれ違う想いは

もう、重ならないのだろうか









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