短編

□使命
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『どーしてこんなに痛いの?』





〜I love you〜






薄暗い。月光が照らす部屋の中。



「はっハっ・・・ッ」

機械鎧の腹が軋んだ。

――――――――――…………・・・


「・・いてて・・・」


つなぎ目をさすりながら起こしていた上半身を再びベッドへと横たえる。

――久しぶりに見た――

あの日の、あの日までの幸せ。

壊れる耳をふさぎたくなるほどの音。

血だらけで純粋な目。



「ショッキングなこともあったしな。」


手の甲で額の汗をぬぐいながらぼんやりと天井を見上げる。再び眠りにつこう、と思ったとき。


「ん?」

ふと感じる違和感。


「・・・エド?」



動かすとキィと鳴る扉を開けて、廊下に出る。そのまま隣の部屋の扉をたたいた。


「エド?」


「・・・・」


「入るよ?」


ぎぃいい・・

あけてみると案の定、エドワードも上半身を起こして何か考えるような目をしていた。


「眠れない?」


「・・・別に。ちょっといやな夢見ただけだよ。」


こんなときまで虚勢を張る弟に苦笑しながら、ベッドの傍らに腰を下ろした。


「キツいね。」


ボソリとつぶやくと、エドワードの肩が震えた。


気まずい沈黙が続く。


「俺たちのしてることは何なんだ?」

――どれほど何もいわない時が過ぎただろうか。エドワードが突然口を開いた。

「錬金術は結局・・・また奪っていったじゃねぇかよ・・・ッ!」

「・・・」


「母さんが俺を攻めるんだ。『ちゃんと作ってくれなかった』って。恨みのこもった声でささやいてくる。――母さんはやっぱり、オレを恨んでんのかな・・。」


「そんなことない。」


即座に否定した姉に、エドワードは驚きのまなざしを向けた。


「エドとアルが、命をかけてでも取り戻したいと思ったお母さんだろ?その人が息子を恨むなんて絶対無いよ。」

そういって肩にエドワードの頭を寄せた。


「もうわかってる。2人のことは。あたしの知る限りの2人なら。」


「・・・ぅ」

顔をゆがめ、つらそうにうめく弟をただ抱きしめた。


「(あたしも言えたモンじゃないけどな。)」


自分の夢を思い出して、自嘲気味に笑ってみる。でもそれは酷く寂しげな微笑だった。


雨はまだ   降っていた。




************************


暗ッ(*_*)自分でも引いてしまうほど暗いです;
ということで、2巻のあのシーン、「ヒロインとエド編」でした♪予想外に悲しいことに(苦笑)。
弟を包み込む暖かい精神。姉として愛しているからこそなせる業です(何じゃそら)!

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