おお振り短編

□君のメロディー
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***サンがショパンのノクターン(だっけ?)を弾いてる。すごく優しくて甘い、少し切ないメロディーが綺麗。

***サンはこないだCDショップで会った音大生。背がちっちゃくて華奢で、見た目はオレと同じ高校生で通りそうな感じの女の子。子じゃ可笑しいのかな、年上だし。

「わー。***サンすごい上手い。ピアノ専攻だよね」

「うん。ずっと習ってきてこんなだけと」

オレからすれば上手いと思うんだけど、やっぱ音大はプロ目指してる人も多くて、自分は全然ダメだって感じてるらしい。クラシックはよくわかんないけど才能がどうとかって言うのは野球やっててもあるからわかる気がする。オレなんかみんなにクソレとか言われてるし。


「ねぇ文貴くん。この前美味しいフランス菓子貰ったんだけどさ、一緒に食べない?」

「ん!!食べる!!フランスのお土産?」

「いやいや、フランス行く人もいるけどね。銀座のだよ」

微笑みながらお菓子をテーブルに出して、紅茶もなんか本格的なのを淹れてくれる***サンは、なんかお嫁さんみたいでちょっとドキドキした。

お湯を沸かして、ポットとティーカップを暖めて、とか色々やってる。2人とも喋らなくてCDのピアノの音と、食器の音とお湯を沸かしてる音しかしないけどすごく心地好い。

「はい、どうぞ。ミルクと砂糖はここにあるから」

「ありがとう。なんか本格的だね。ウチじゃティーバッグ使うし」

「私も1人で飲むときはティーバッグ使ってるよ。今日は特別」

砂糖を慣れた手つきで入れながら目を閉じて落ち着いてそう言う。すごく大人びて見えた。

「ねぇ、***サンは彼氏いるの?」

「………」

マドレーヌを食べてた***サンの手が一瞬止まった。

「いないよー。いたら文貴くんのこと家に上げて2人きりなんてできないでしょ」

クスクスと笑っていたけれど、どこか寂しそうな顔に見えた。

「最近別れた。とか…?」

「…。そう、あたり。先輩と付き合ってたんだけど、先輩プロ目指してる子と浮気しててね、別れたの」

「ひっどー。そんなやつのこと忘れちゃいなよ。***サン可愛いし、彼氏なんて作ろうと思えばすぐできるって!!」

「そんなことないと思うけど…。ごめん、ありがと」

目に溜まった涙を指で拭きながら、ちょっと震えた声でそういった。

ごめん、ちょっと待ってて。と言って***サンはリビングを出ていった。オレが泣かせたんだけど、どうしても追いかけられなかった。


しばらくして戻ったきた***サンの目は、ちょっとだけ赤かった。

「ごめん、オレ、あの…」

「ね、文貴くん歌歌える?」

「え、う、うん」

「こないだね、失恋ソングとかいっぱい聞いてて。すごい好きな曲見つけたから耳コピで楽譜作ったの。知ってる?この曲」

「知ってる!!オレもその曲好き!!」

ピアノは***サンで、オレが歌って。サビの所のフレーズが妙に頭に引っ掛かって歌い終わってからオレは***サンに言った。


「オレ***サンのこと好き。***サンの彼氏、オレじゃダメかな…?」

***サンはびっくりしたあと笑って、ゆっくり口を開いた。

「        」




君のメロディー
好きだよ。
気付かせたのは君とのうた。







あとがき

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