おお振り短編
□練習前のグラウンドで
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兄貴が卒業した高校で、俺も兄貴と同じ野球部に入った。
3年生はみんな兄貴のこと知ってたから、
「ねー。りおってさ、呂佳サンの弟のりおだよね?」
みんな俺を兄貴と並べる。ちなみに話しかけてきたのは3年のマネージャーの***サン。
「そーっスけど……」
「呂佳サンのイメージからすると、もっとこう、ね?」
***サンは両手の人差し指で四角を描く。
「ね?って言われてもわかんないスよ!!」
「なんていうか、もっとゴツい感じだと思ってたよ」
俺と兄貴を比べて、兄貴のほうが上だって言う。確かに兄貴の弟だし兄貴は凄かったかもしんないけど。
「りおさ、呂佳サンと比べられて気にしてるでしょ」
「…………」
俺は俺で、兄貴の弟ってだけじゃないのに。
「呂佳サンとは違う不思議な髪とか目の色とかも…」
***サンは背伸びして、手を目いっぱい伸ばして俺の髪を撫でる。
「***サンは黒い髪のが好きなんスか?」
「ん?あたしはりおの不思議な色のほうが魅力的だと思うよ。他の人が持ってないものでしょ?」
ニッっと笑う***サン。恥ずかしくて、顔が赤くなるのがわかって、目を逸らした。
「りおはね、りおだから。呂佳さんの弟だからどうだなんて思ってないよ。まぁライバルがいるのはいいことだけどね」
「っ…。あ、あの!!」
言いたいことがあるのに、言えなかった。
***サンが落ち着いてってそう言って笑った後に、
「あたし、りおのいいところいっぱい知ってる」
「え?」
「かわい気あるでしょー、犬みたいで可愛いでしょー、根はマジメないい子だし、髪とか目とか綺麗でしょー、呂佳サンみたいに怖くないし。あたし、りおのこと好きだよ」
目をいろんなところに動かして指を折りながら数えて。***サンは俺の背中をパンッと叩いて「ってことで元気出せ!」って言った。
「俺も***サンが好きです」って言おうとして、やめた。***サンが言ってる好きは、先輩後輩の好きなんだろうなって思ったから。
だから、
「俺の名前、『りお』じゃなくて『りおう』です」
って訂正だけした。ホントは***サンが『呂佳サンの弟』じゃなくて『仲沢利央』として見てくれてるだけで嬉い。
ただ「好き」って言われた嬉しさと恥ずかしさを隠しただけ。
「どっちにしろ、りおのこと指してるんだからいいじゃん。さ、練習練習!!」
そう言ってマネジの仕事に行く***サンの後ろ姿はすごくカッコよくて、やっぱり俺は***サンが好きなんだなって再認識した。
練習前のグラウンドで青春
俺、初めて兄貴がいて良かったって思った。それも***サンのおかげ
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あとがき