おお振り短編

□僕は彼女にオトサレル
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黒のサラサラロングヘアー。

大きな瞳。

色っぽい唇。

整った顔。

グラマーでもスレンダーでもない、セクシーさ。

短めのスカートから伸びる、白くて長い綺麗な足。

Yシャツからチラ見せする胸。

優雅な動きに可愛い笑顔。

たまに見せる不敵な笑み。


それが、オレの好きな***ちゃん。



そして***ちゃんは



阿部の、



彼女…。





今日も天気は晴れ。窓から吹き込む風が気持ちよく、先生の授業は子守唄のよう。

朝と放課後の練習で消耗しきった体は正直で、眠気に襲われた。


キーン コーン カーン コーン


「じゃ、終わるぞー」

「きりーつ…」

ガタガタと音を発てクラスメイト達が立ち上がるが、俺、水谷文貴は机に突っ伏したままだった。

「水谷」

「うー…」

教師の呼び掛けにも適当な返事をするほど眠い。さっさと職員室戻ればいいのに…。

「おい!!水谷!!」

  ベシッ

「うぐっ!!」

出席簿の角で頭を叩かれやっと目が覚めた。周りからはクスクスと言う笑い声が漏れていた。

クラスの全員に礼をさせ先生が出ていくと、俺の変な叫び声の話題が少しでて、消えた。

「お前また寝てたのかよ」

阿部がやって来て話しかけた。

「えー、だって眠かったし。阿部と花井は眠くないワケ?」

近くにいた花井の返事は

「休み時間と昼休みと家で寝れば充分だろ」

いたってマジメだった。

「たーかや!!何の話してるの?」

「おー、***。水谷がまた寝てたって話」

「水谷クン、おはよー」

「あ、お、おはよ。***ちゃん…」

***ちゃんののふわりとした笑顔に自分でもわかるくらいに顔が紅くなる。(俺カッコ悪いな…)

「2人も練習大変なのにあんまり居眠りしないよね」

「テストの点悪かったら試合出さないって言われてるからな…」

「えー、あたしなんか帰宅部だけど寝ちゃうよ?赤点は無いけど」

「(なんだ、花井とも普通に話すんだ…。あ、阿部怒ってる)」

***ちゃんと話す花井はどことなく照れているように見えるし、阿部はイライラしているのがよく分かる。

「おい***!!お前もう席戻れ!!」

「はぁ?なんでよ。あ、もしかして妬いてんる?」

「んな訳ねぇだろこのアホっ!!」

***ちゃんは「隆也のばーか。つまんないのー」と言って女友達の方に行ってしまった。

もっと話してたいけど、やっぱ阿部の前じゃ無理。

「阿部ー。あれじゃ***ちゃん可愛そうだよ」

「はぁ?なんで?」

「俺もそう思う。阿部口悪いし。束縛も厳しくね?」

「あんまりオレ意外の男と喋らせたくねーんだよ」

「だからってあの言い方は酷いよー。***ちゃん可愛いから他に優しい男見つけて阿部と別れるかもよ?」

「そりゃないだろ。束縛されたいって言ったの***だぜ?」

「ふーん…」

そう言って視線を***ちゃんの方へ向けると、目があった。

***ちゃんはニコッと微笑むとまた女友達と話し始めた。

「***ちゃん、可愛いな…」

「狙ってんのか?」

「…阿部と付き合ってなかったら狙ってた。かも」

「へー…」

「(ウソ。ホントは阿部の彼女とか関係なく好き)」

その思いは口に出したことがないから、知ってる人はいないと思う。

もしかしたら態度に出てるかも知れないけど。



そして、***ちゃんと俺の関係が崩れ始めたのも、その日からだった。






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