おお振り短編

□コスモス
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――オレ達の夏はあっけなく終わってしまった――

あれからもう、野球には関わりたくないと思った。







野球部を引退してもう3日。キャプテン「だった」河合は誰もいない教室の窓から野球部の練習グラウンドを見ていた。

今までと変わらぬ練習風景。違うのは、そこにもう河合自身と、同級生の居場所がないことだ。


それと同じく、マネージャー「だった」***も一人廊下の窓から野球部の練習風景を見ていた。

今までと変わらぬ練習風景。違うのは見ているのがグラウンドからではなく廊下の窓からということ、同級生がいないことだ。


***が教室へ戻ろうと歩いて行くと、オレンジ色に染まりぼんやり外を眺めるキャプテンが見えた。

(和己、堪えてンだろうな…)

「和己!!何見てんの?」

「お?あ、あぁ、***か」

「野球部?」

少しギクリとしたような表情をした後、河合はさみしそうに口を開いた。

「なんかこうやって見てっと普段と変わんないように見えてさ…」

「うん。わかる…。悔しいしさみしいけど、もう結果は変わんないよ…」

2人はただ黙って練習を見ていた。

「あたしらのこと、待ってはいないよね。あたしらはもう終わって、また新しく始まったんだし」

「ならいいけどな。そしたら来年は甲子園まで行ってほしいよな」

「うん。最後に顔出してく?」

「いや…、オレは」

(もう野球に関わりたくない、なんて言ったら***はどう思うんだろうか。***はこれから先、野球に関わって行くんだろうか…)

「野球はもう嫌?」

「いや、そういうわけじゃないけども」

「そう?ならいいけど」

(あぁ、やっぱやめてほしくはないんだ)

「多分さ、和己はここで野球やめたら後悔すると思う。大学でも野球やるでしょ?」

「わかんねぇ…」

「あたしさ、トレーニング学とか勉強したいなーって思って学校さがしてんの。まだ野球に関わってたいし」

和己は***が自分よりずっと先を歩いているような気がして、少し目を伏せた。

「あ、なんかね、準太がさ、試合終わってから練習出てないんだって。どう思う?」

「準太もなァ…。泣いてたしかなり堪えてんだろうしなァ…」

「うん、でも1、2年にとってこれは経験であって高校野球やってく上での糧だし、あたしは今すぐにでも引っ張って練習参加させたいと思ったわ。でも準太に自分で戻ってきてほしいんだ…」

「うん」

スゥっと頬をなでていく風と揺れるカーテン。椅子に座った和己の横顔を少し上からみた***は笑って、

「なんかさー、子供のこと心配してるお母さんの気持ちー」

その言葉を聞いて和己はふっと笑った。

「あ、やっと和己笑ってくれた!!あたしがお母さんなら和己はお父さんだよね」

「なんか違うような気もするけどな」

「お父さんも、もうそろそろ元気になんないと子供たち心配するよ」

「うーん。やっぱ母親は強いな」

「お父さんも強くなくちゃね」

そう言って和己の頬に、***はちゅっとキスをした。







コスモス
強くて厳しくて優しくて
野球が好きなあなたが好きよ。









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