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□はじめまして、僕は王子様です。
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「あら、本当?まぁ、それは急に」

始まりはママとそのお友達との電話での会話。
僕は生まれた時から一緒で同い年のおにーちゃん(みんなが言うにはそれは双子なんだって!)と遊んでいたけどお気に入りの玩具をとられてしまっていい加減お家の中に居るのに飽きていた。
ばかジルー。あれは僕がサンタさんにお願いしてやっと手に入れたレア変身ベルトなんだぞ。

「ねー、ママー。僕公園行ってきてもいいー?」

「駄目よー、一人じゃ危ないでしょ?」

「でーもージールがぁー」

ぷきゅう。膝に抱えたぬいぐるみがつぶされて可愛そうな音が鳴る。
リビングの主の大きなくまのぬいぐるみ、通称はなちゃんは垂れた顔を膝の上で更に垂れさせた。
僕だって僕だって出来るならお家で遊びたいよ。でもこれ以上お家に居ると、全部ジルに玩具をとられちゃいそうで嫌なんだもん。

「ママー、」

ぷぴぃー。ママに向かってはなちゃんを鳴らす。
はなちゃんのおててを同時にぱたぱた動かして、いいでしょ、いいでしょ、とせがめば、ママはため息をついて、お友達と話し終えた電話の子機を元の場所に戻した。

「全く仕方のない子ねぇ、そんなに公園で遊びたかったら何軒か隣のお家からスクアーロ君誘って行きなさいよ、」

「スクアーロ?誰それー?」

知らないよ、僕。だって僕にそんな名前のお友達居ないもん。
僕が黙ると、ママは何が可笑しいのか突然噴き出して、覚えてないの?と肩を苦しそうに震わす。

「赤ちゃんの頃に遊んでたスクアーロ君よ、ほら、髪の毛がさらさらの、」

「知らないよー。嫌だよ、知らない子と遊ぶのー」

「我が儘言わないのー。あ、スクアーロ君は昨日引っ越してきたんだけどね、そのお父さんのザンザスさんがルッスーリアちゃんのお友達なんだって」

「ルッスーリアおじ、おねえさんの?」

ルッスーリアおじさ、じゃなくてルッスーリアおねえさんはママのお友達で、さつきの電話の相手もそうだったらしい。僕はおねえさんの優しい所が大好きだけど、たまに強く抱き締められて頬擦りされるのが嫌だった。

「そー、ルッスーリアちゃんのお友達なら悪い人は居ないわ。すぐ近くの青い屋根のお家だから初めてでも分かるよ」

「僕が迎えに行くのー?」

「当たり前でしょー?スクアーロ君引っ越してきたばかりでお友達いないんだから、ベルがなってあげなさい」

ママはよしよし、と僕の頭を撫でて首を傾げた。僕はママに頭を撫でられてお願いされるのに弱い。
ママは僕が断れないのを知っててするのだから、すごくずるいと思う。

「はーい…」

「いい子ね、ベルー。じゃあ決まったから、これ、」

「?」

ふわり、頭の上に何かが乗せられた。それでも重すぎないそれに触れればかつん、と硬い音がした。

「なぁに、これ?」

「これね、前にパパと一緒に出かけた時にきらきらした石を見て、ベルとジルが綺麗だねー、って言ってたでしょ?」

「うん、」

「だからね、二人に色違いできらきらしたのを可愛かったから買ってきたの」

「ジルとおそろいなの?」

「そうよ、でもジルは今ベルのベルトとっちゃったからベルだけよ?お兄ちゃんはあとね」

「うん!」

嬉しいな、嬉しいな。
僕とジルはいつも色違いのおそろいで、だけどジルはとにかく成長するのが早くて服だってたくさん持っている。だから僕が先に新しいものをもらうなんてほとんどない。

「これは王冠…、でも髪飾りだからティアラかな?なんだかそれつけてたらベルも王子様みたいよ?」

「本当ー!?じゃあ僕王子様になるー!!」

「おおっ、それじゃあ王子様、スクアーロ君のお家に行ってらっしゃーい!」

「行ってきまーす!ママ!」

ちゅっ、とママのほっぺたにありがとうのちゅうをしてから僕はお気に入りの靴を履いてスクアーロ君のお家に出発する事にした。

スクアーロ君ってどんな子なんだろう?楽しい子かな?それともおとなしい子?

とりあえずスクアーロ君がどんな子だろうと、僕はスクアーロ君に会ったらこう言うんだ!

「はじめまして、僕は王子様です」

って!






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