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□契約、しませんか?
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「山本武、僕と契約する気はありませんか?」
「契約?俺と骸がか?」
柔和に笑う骸の言葉に山本は訝しげに首を傾げる。
契約、とは如何なるものか、と。実質山本は綱吉と骸の対決(骸にしたらそれはただの暇潰しが発端だったのだろうけど)を始終まで見ていない。分からなくて当然、である。
「はい。僕と、君がです」
「契約って言われてもなぁ…。何すればいいか分かんねぇし、あ、金なら無ぇかんな」
「お金なんてもの、要りませんよ。馬鹿馬鹿しい」
「じゃあ何すればいいんだ?」
きょとん、目を丸くする山本に、骸は眉根を寄せた。全く、なんて天然なんでしょうか。知らないことがあれば何でも聞けばいいと思ってませんか?
呆れた、とため息を一つ深くついてから、骸はそっと冷たい右手を山本の頬へ当てた。
「契約とは、今僕が手にしている三又、という武器で君の何処かを傷付けて僕が憑依する事を許すものです」
ほら、例えばこの頬に擦り傷一つでも付ければ、簡単に僕の侵入を許してしまう。
骸はひたりと山本のもう片方の頬に三又を当てる。
その武器の冷たさに、山本は僅かに身震いした。
「それって、痛くないのか?だって刺したりすんだろ?」
「大丈夫ですよ、痛くなんてしませんから。だって君は僕の大切な人、ですから」
不安なのか、山本は肩を竦ませて貼りつけた様な笑みを広げている。
それを見た骸は山本とは反対に心底楽しそうに笑った。
「さあ、早く決めてください。僕と契約するのか、はたまたしないのか。僕はこう見えて気は長くありません」
骸は山本の肩にしなだれかかり、持っていた三又を床へ落として耳元でひっそりと囁き、わざとらしく息を吹き掛ける。
そしてゆっくりと、耳たぶに甘噛みを。
「あーもう、ひっでぇのな、骸は。俺が優柔不断なの知っててそういう事平気で言うもんな」
山本は短い髪を無造作に掻き毟ってから、骸の頭を数度撫でた。骸はうっとりと、目を細めそれを享受した。
「そうですよ、僕はとても酷い人間です。君の言う通りですよ。で、契約は?やはりしないんですか?」
「はははっ、骸と繋がっていられる手段ならば喜んで?」
「クフフ、やはり山本武、貴方は僕と相性がいいみたいですね、痛かったらごめんなさい?」
「いいぜ、我慢してやる」
そして、二人はくすりと笑って互いに口付け合い、骸は三又に、山本は骸の腰へ手を伸ばした。
契約してまでも、貴方と繋がりたい。
(骸、俺が断れないの分かってたろ)
(さぁ、どうでしょうね)
((まぁ、どっちにしろ考えていたのは同じことだったのだ))
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