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□断末魔に恋をして
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張り込みなんてやってられない。
黙ってじっとなんてしてられない。

どうして王子がこんな地味な仕事をしなくちゃいけないの?
王子は格好良く派手に登場して、逃げ惑う標的を華麗に切り刻み頭っから真っ赤な飛沫を浴びたくてうずうずしているっていうのに!
未だに標的の動きはゼロで今すぐにゴーサインなん出せない。
地団駄を踏んでも踏んでもこの興奮は押さえきれなくて、もう標的が何人居ようが居まいが突っ込んでやろうか!?という気さえ起こる。


……ん?あれ、中々自分でも良い事思いついてんじゃね?


「べ、ベルフェゴール様?」

後ろには俺がいきなりにんまり笑んだことで驚いて心配そうに話しかけてくる部下が居ることだし、他には建物をぐるっと一回りした所にも見張りは居るんだ。一応指揮をとっているのは王子なんだから、王子が言えば誰一人逆らわずに従うだろう。

「よしお前、今から10分…いや、5分でいいからじっとそこで待ってろ」

標的の潜んでいるであろうフロアを一瞥してからおそらく状況を把握しきれていない部下にそう告げて、その建物へと侵入すべく走る。
丁度降ってきた冷たい雨水に身体を冷やさぬ様に、滅多に被らないフードを深く被って、付いてこようとする部下に追いかけてくるなと釘代わりにナイフを投げつけた。


さあさあ、これからは切り裂き王子プリンス・ザ・リッパーこと、このベルフェゴール様が直々に地獄へ送ってやる華麗なショーの始まりだ。

今宵の仔猫ちゃんや逞しい狼さん達は、どんな声を聞かせてくれるのかな?


断末魔に恋をして


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