08/12(Wed) 01:14
○月×日
ゼン
異世界に来て初めて風邪を引いた。
大したことじゃないだろうと思ってご飯を食べているとやっぱり吐き気がしてきた。
《…残すの?》
トーワの声に肩を竦めてフォークとナイフでサラダを一ヶ所に集めて、皿の五時の方向に置いた。
直ぐにマリアンが皿を下げてくれた。
なんだから頭が…ボーッとしてる。
熱が上がったか――…「…熱いな」
視界に青い袖が俺の前にゴブレットを置いた。男とは思えないぐらいに白い手が、俺の顎を支えて上に向かせて、視界いっぱいに黒い髪が広がった。
思わず目を閉じた。
するとすぐに冷たい感触が額に広がった。
「今日は休め。デスクワークだけなら僕だけでも十分だ」
なんで気付いたんだろう…隣に座ってるから?
疑問に見つめたら、柔らかく優しく笑ってくれた。
「寝てろ」
優しく頭を撫でられて、席を立つ彼をぼんやり見つめて
俺はゴブレットの水を飲んだ。ふと隣に解熱剤があるのに気が付いて
俺は小さく笑って部屋に戻った。
それは少し寒い秋の日の事。
W53K/W64K
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