刹那

□第三章 Rain
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 ───雨だった。
 あの時も、雨が降っていた。



【第一話 Rain】



 昨夜から降り続く雨が、窓を激しく叩いて耳障りに感じる。アリアは豪奢な飾りのついた寝台に横になり、ふかふかの羽毛の枕に顔を埋めていた。

 今日何度目かの寝返り。
 自然と眉間には皺が寄って、溜め息は癖になったように吐いていた。


 気怠げに身を起こし、寝台の横に備え付けてある時計に目をやる。
 時計の短針はもう2時を差していた。

 再び気怠そうに寝台に身を埋める。反動で身体が軽く浮いた。
 せっかく用意してもらった寝間着のスカートが皺になる、と考える余裕は無かった。


 枕を掴む指に力を入れ、眉をきつく寄せる。目だけ動かして、部屋の中を見る。

 初めてこの部屋に入った時は、そりゃあ鳩が豆鉄砲喰らった顔をしていたと思う。使用していないからと言っていたが、この部屋がある塔と裏腹に、そこは想像より遥かに上等な部屋だった。

 淡い白で統一された室内は簡易な寝台と机しか無い。
 しかし、金糸で刺繍された唐草模様の絨毯に、触れるとサラサラと流れそうなくらい手触りの良いカーテン。天井から吊されたキラキラと輝くシャンデリア。
 どれもがアリアの見たことの無いような豪華で繊細なもので、アリアは呆然と立ち尽くした。

 この部屋のものを売ればどれだけの孤児を救えるだろうと怒りを覚えた程だ。使って無いならそのくらいしたらどうだろう。


 しかし、訪ねている分際で言えるものでは無い。

 外を見れば、周りは高い塀。部屋は外からしか開けれない。
 アリアは軽く息を吐く。

(……まさか、罪人の拘置所だなんて──ね)


 窓は高い塀に囲まれていて、完全に隔離された状態だった。




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