DQV-定められし使命-

□SAVE1:盲目の勇者
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勇者の誕生日と同時に旅立つ日でもあるその日は、太陽でさえもそれを祝福し、空は雲一つとない晴天となった。
人々も外の明るさに呼ばれるように表へ出て、楽しく談笑している。

「・・・・・・はあ」

そんな中、その場には不釣合いな空気を持った姿が一つあった。
酒場から出てきたらしく、酒場を背に少々俯きながらとぼとぼ歩いている。
旅人の服を身にまとったその者は、少し小柄で背には細身の剣を。腰には木製のブーメランをかけている。
顔は何か嫌なことでもあったのか、ひどく陰鬱だ。
暗い空気を持ったこの者こそ、今話題の勇者である。
勇者は先ほどの酒場の出来事を思い返していた。

『おいおい、冗談もほどほどにしてくれよ。あんたが勇者だって?』

『これじゃ命がいくつあっても足りねえなぁ。なあ、おい』

『ガキの遊びじゃないんだ。とっとと家にでも帰って彼氏とよろしくしてるんだな』

・・・さすがに最後の言葉にはむかついたが、相手の反応も最もだと思った。
いくら王に酒場辺りで仲間を連れて行け、と言われ、その酒場のオーナーであるルイーダの紹介でいい人を紹介されても、命を預ける相手がこんな容姿の子供では高ぶっていた闘志も萎えるというものだ。
あまつ女と言われる始末。
(想像してた通りじゃないか・・・・・・しょうがない)
自分の容姿については重々承知している。
体の線も細く、小柄で華奢。しかも盲目だ。
盲目でも困ったことはないのだが、相手にはどうしても頼りなく見えるのは仕方のないことで。
相手にだって選ぶ権利はある。
だが、いざその場でそのことを言われると思った以上に突き刺さった。
再び長く重いため息をつく。

結局、父同様アリアハンを一人で旅立つことになった。

8年前、オルテガはたった一人でアリアハンから旅立った。
そして志半ば、火山火口付近で命を落とした。
そう聞いている。
王は自分をオルテガの二の舞にはしたくないと言って、この日のために強者を酒場に招いてくれた。
・・・それも無駄になってしまったが。

勇者は謁見のときにもらった小さな金のティアラに触れると、申し訳なさそうな表情で城の方角へ顔を向けた。
盲目なのだから、全く見えないのでしょう?とよく言われるが、そんなことはない。
確かに姿形や、色もわからない。
だけど、モノには気配やオーラというものがある。
生きているものとそうでないもののオーラは当然違うし、同じひとでもオーラの色は違う。
また、目が見えない分嗅覚や聴覚、また人の言葉から伝わる感情にひどく敏感になった。
だから、この目に慣れてから困ったことなどない。

「・・・行ってきます」

小さく呟くと、勇者は誰に見送られるでもなく一人アリアハンを後にした。
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