DQV-定められし使命-

□SAVE1:盲目の勇者
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「とーちゃくー・・・っと」
教会の裏、表通りからは死角になる木陰にひゅん、と突然陽気な声と共に一人の少年が舞い降りた。
ナジミの賢者の弟子でもあり、先日城に忍び込んだあの少年である。
少年は魔法使いが着るようなローブを上からはおり、顔をあからさまに見せないようフードを深くかぶっている。
ちょっとした変装である。
ナジミの塔からここまで大した距離でもないが、面相臭がった少年はキメラの翼でワープしてきたのだ。
「さて。勇者さまはどこにいるのやら?」
入れ違いに出ていってしまったことなど知るわけもなく、少年は盲目の勇者を探すべく表通りに出た。
ここを出る前に王様に謁見することは知っている。が、さすがに指名手配中というのもあるが城を出入りしたくない。
気づかれたらおしまいだ。
もう謁見もすましているかもしれないのに、そんなバカな賭けに出るのもどうか。
「てことは、酒場かな」
この日のためにここの王が各地から強者を呼んでいたのは知っている。
きっと勇者の旅に同行させるためだろうと、ナジミの賢者は言っていた。
ならば勇者は少なからずとも強者が集まる酒場に訪れるはずである。
少年はさっそく酒場に向かった。



「ええ??もう勇者さま、来ちゃったの??」
もうすでに勇者が訪れたと聞いた少年はがっくりと肩を落とす。
「ええ、15分くらい前になるかしらねえ?」
色気のあるオーナーのルイーダは、考えるように少し上を向く。
「15分前って・・・ぼくがここに着たぐらいだ」
少年は頭を抱えるように唸った。
見事にすれ違いというやつだ。
自分が面倒臭がらずに歩いてここに来れば、絶対途中で会えた。
誤算だ。これは想像もしてなかった。
「あんた・・・あのこの仲間になってくれるのかい?」
「え?・・・そうだけど?」
少年の様子から察したのか、少し不安そうな面持ちでルイーダは聞いてきた。
それに少年は不思議そうに首を傾げる。
そんな少年を見てルイーダは次に余裕の笑みを浮かべる。
何か企んでる。そんな笑みだが、ルイーダがやるとそれも色気になるから不思議だ。
「それはよかった。ほら、あのこあんなだろう?誰も一緒に行ってくれる人がいなくてね」
少年はルイーダの言葉に一瞬目を見開くと、途端真剣な表情になりぐいっと身を思い切り乗り出した。
「ちょっと待って!それって勇者さまはたった一人でここを出てったってこと?」
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