短編、その他
□あなたの願い、僕の願い…
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俺には、この世に生きる全ての人間を殺しても良いほど愛した人がいた。
その人は、ただの道具である忍の俺を『好き』と、頬を染め恥ずかしそうに笑顔で言ってくれた。俺はそれだけで幸せだった。まさか、その人と恋仲にまでなれるとは思わなかった。
そして、春がやって来た…
「佐助ー!花見をするぞ!」
「急にどうしたの?」
「せっかく綺麗に咲いているんだ。楽しまなければ勿体無いだろ?」
「そりゃ、そうだけど…」
「では、出掛けるぞ!」
「えっ?出掛けるって、いったい何処に?」
「良いところだ!」
旦那は悪戯を思い付いた子供のような笑顔をしながら俺様の手を引っ張って行く。
しばらく黙って付いていくと、旦那はどんどん山の方に進んでいく。いったい何処に行くんだろう?そう思った俺様は旦那に声をかけようとした瞬間…
「佐助、目を閉じろ」
「えっ?何で?」
「良いから!」
俺様は旦那に言われるまま目を閉じると、旦那は俺様の手を再び引っ張って歩き出す。