シナリオ

□ソムリエ
1ページ/2ページ

シナリオ「ソムリエ(ためひめ3)」13稿目

九条光太郎(36)男、生理が好きな生理ソムリエ
戸川姫子(25)女、芯のある女、生理ソムリエの存在は知っている
ヤスコ:オカマ風の強そうな女
ユウコ:ただ普通にトイレに行きたいだけの女
タマ子:年長者の女
ナギサ:強そうな女
マリ:若い女
その他女数名
監督:映画監督

1◯道◯※音無

光太郎がペットボトルの血を飲みながら大きな黒いゴミ袋をパンパンにして歩いている。
光太郎が公園を見ると女がトイレに入って行く。
光太郎がじっと見つめる。
テロップ「5分後」
女1がトイレを出て行く。
光太郎はゴミも飲み物も捨て急いでトイレにむかう。
タイトルイン「ソムリエ」

2◯公園・トイレ◯

三角コーナーのナプキンを手にし、次々に舐めて行く。
光太郎「(丸まったナプキンを広げ舐め)これは……ちょっと古いな、3日は過ぎているな……これは(胸ポケットのコップでテイスティング)、駄目だ、幼くて深みが足りない……(タンポンを見つめ、止まる)こ、これは! (タンポンを口にし)この香り、この味、この血!」
タンポンをベロベロ舐める光太郎が脱帽し恍惚の表情を浮かべる。
光太郎「ああぁ……これぞ運命の味……ああ!」
ズボンのチャックを開ける光太郎。
ドアかトイレ外観のインサート、昇天の声!。
壁に白濁した液体が垂れている。
光太郎がぼうっとほうけている。
トイレのドアが開き、姫子がいる。
姫子「ちょっと、いつまで掃除してんのよ! って、あんた! 噂に聞く生理ソムリエの九条光太郎ね!」

3◯公園・トイレ前◯

外に突き飛ばされる光太郎。
トイレには何十人もの女が並んでいる。
皆、振り返って光太郎を見つめる。
光太郎「え」
ロープが飛び、十字架が飛び。
姫子N「行け! ヤスコ!」
ヤスコも飛ぶ! 

3.5◯公園・開けた場所

十字架でロープに縛られた光太郎。
光太郎「うわあ!」
ヤスコが光太郎を後ろから押さえている。
女が光太郎の周りに立ち、姫子が中心に立つ。
姫子「捕まえたわ経血魔! 私達の聖域を侵して!」
光太郎「(指差して)あっちの女子トイレが空いているだろ!」
ユウコ「あっちは汚いし狭いの!」
タマ子「まあ、見て! この袋、汚物だらけだわ!」
黒いゴミ袋のなかにはナプキンやタンポンが大量に入っている。
姫子「ここに居る皆、生理なのよ」
ヤスコ「光太郎ちゃん、あなたに生理の辛さが分かる? あたしも毎月大変なの」
皆がなんだかんだ言いながらナプキンやタンポンを投げる。
ナギサ「(ナプキンを光太郎の口に突っ込み)経血がズボンに染みちゃったときの恥ずかしさを知れ!」
マリ「(タンポンを光太郎の口に突っ込み)生理なんて来ない方が良かったって思うくらいなの! 痛いし、気持ち悪いし!」
監督が登場し「生理前症候群の便秘で5時間トイレに籠りました」と言って光太郎の方へ向かう。
光太郎の口からナプキンタンポンが堕ち、口から血が滴る。
光太郎「やめろ……やめてくれ、生理をそんなふうに扱うのはやめてくれ……俺は生理が好なんだ」
姫子「好き?……生理が?」
光太郎「そうだ、女は神の罪を背負って血を流すというが、それはまちがいだ……罪深いのは女の子が痛がっているのを知りながらバカにしたり、なにもしない、ましてや変態行為に走る俺達男子にあると俺は思う。なあ、戸川姫子さん」
姫子が近づく。
姫子「どうして私の名を知っているの?」
光太郎「僕はソムリエだ、一口でその人の全てが分かる」
姫子「で?」
光太郎「……あれは世界中のどの女よりも美しく尊い味だった。人とは違うかもしれないけど、これは愛だ! 言わせてくれ、君は運命の女だ!」
姫子がロープを外す。
姫子「ヤスコ、もういいわ……ただの変態じゃなかったのね」
ヤスコが腕を外す。
光太郎が倒れ、痙攣しながらもがき苦しむ。
光太郎「姫子。ああ、喉が渇いた。姫子、これが僕の呪いだ……生理への無知と偏見が僕らを引裂き、苦しめているんだ姫子……(落ちているナプキンを舐め、吐きそうになり捨てる)ダメだ、もう君のでなきゃ満足できない……」
姫子「(見下して、間)あーあ、可哀想な人。なんて哀れなのかしら」
ヤスコ「ちょっと姫子、スイッチ入っちゃった?」
姫子の脚に抱きつく。
光太郎「愛している、愛しているよ姫子と生理を(ダメ男感)」
周りがかたずをのんで姫子と光太郎を見つめる。
姫子「(光太郎を可愛く思って)ねえ、見て見なさい……」
ヤスコ「やだあ、ちょっと、姫子!」
姫子がスカートをたくしあげる。
スカートの中から紐が垂れ下がっている。
姫子「ほら、引っ張りなさい」
それをひっぱるとポンと音がしてでかいタンポンが出てくる。
光太郎の顔を血が濡らして行く。
エキストラの唖然とした顔(「あらま!」的な)。
姫子・光太郎「ああっ(ここはMで互いの名前を叫びあうとか良いかも)」
周りの女達がひゅーひゅーいえーいえー生理サイコーと大騒ぎ。
ヤスコは恥ずかしがって喜んでいる。
姫子「生理は……面倒くさくなんて無いのかもね……愛おしいものかもね……」
光太郎が顔面血まみれで声を上げて果てる。
足元の血だまりに精液が降り掛かる。
テロップ「生理と和解せよ 隔絶をなくせ!(バーンと!) 」

× × ×

猫(次郎)がやってきて公園に落ちているナプキンの血を舐める
猫(次郎)が光り輝いて行く。

4◯空き地

次郎が光の中から投げ出される。
次郎「ニャア!」
次郎がナプキンを持ちながら立ち上がる。
ナプキンを落とす次郎。
次郎「ここはどこだ。俺は誰なんだ」
神が座っている。
神「目が覚めたようだね、次郎君。おめでとう、君は人間に転生だ」
立ち上がり次郎に近づく。
次郎「この声は、そのお姿は……神様ですか」
神「そうだ……だが私は人間を創造し残念に思う。人間は自分の体験したことしか理解しようとしないからだ。それが生理と言う男女の壁を作っている。君は次のソムリエとなり、それを壊して行くんだ」
手が神から伸びて来てタンポンを渡す。
次郎はそれを受け取る。
神「まもなく君は生理への欲望を抑えきれなくなるだろう。さあ次なるソムリエよ、行くのだ」
次郎「……」
監督「いや、待て。神よ」
カメラを振ると監督が座っている。
次郎「え、監督、本番中ですよ」
監督「生理で分かりあえないままでもいいんじゃないか?」
神「なんじゃと」
監督「それが本当の愛なんじゃないか。分かりあえないからこそ、労りあい、分かりあう。そもそも生理は理解するものじゃない、生理なんてただの月に一度の、神秘であるままの方が良いと思わないか」
カメラが引くと録音や照明がいる。
監督がスカートからナプキンを剥がして叩き付け
神「なんと!」
次郎「あ、監督生理中だったんですね」
体を地面に構える。
監督「おい、カメラ向けろ!カメラ! いいか、生理と愛は神をも立ち入れぬ神秘の現象なんだ。良いか、カット割れよ。それに、思い出したがこれは映画じゃないか。ただのプロパガンダにはしたくないぜ! おい、よく撮っておけよ!」
カメラ「はい」
監督「えい!」
監督のスカートのなかから銃声とともに血が放たれる。
神の体から顔に渡って血が噴射される。
神「(英語で悲鳴)」
監督が尻を神と次郎に向ける。
ゴロロロロロという腹の音。
監督「生理前症候群の便秘も辛いんだぜ! おいカメラ、もっと寄れ」
腸が屁とともに飛び出す!
上を向いている次郎と神。
腸が飛び出して神に引っかかる。
神「(英語で)神に向かってなんてことをする! 罪深い! お前なんか死ぬまで生理にしてやる!」
神が顔を拭きながら叫ぶ中、監督は現場を去って行く。
監督「日本語ぐらい話せや。舐めんな生理を」
スタッフ「ア、監督! 何処に行くんですか!」
次郎「あの、神様、僕はどうしましょう」
神が絡んだ腸を捨て、顔を拭く。
神「知らん! わしは国に帰る! あとは人間の好きにしろ!」
去って行く神。
スタッフが神に謝りながら集まって行く。
次郎はタンポンをじっと見つめる。
カメラマンが次郎を映す。
カメラマン「どうします? 次郎さん」
じっとタンポンを見つめる次郎。
次郎「(カメラ目線で)それをどうするかは、僕次第だった」



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ