シナリオ

□PSYCHE 〜プシュケ〜
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「PSYCHE 〜プシュケ〜」

蝶子(20)謎の美女
鮫島(30)冴えない画家



1◯室内(室外も可)

羽の生えた蝶子がワンピースを着て持っている皿の上に糞。
色んな方向から眺めたのちに、おもむろに頬張る。
タイトル「PSYCHE 〜プシュケ〜」

2◯渋谷・街中(夕)

街の中の雑踏(以下、Nを被せながら)。
眼鏡をかけて、歩いていく人をうつろな目で見ながらスケッチしようと、しかし手は動いていない鮫島。
鮫島が目を見張る、その先には蝶子がいる。
蝶子N「おにいさん、何しているの?」
鮫島N「……」
蝶子N「ねえ、今夜、お兄さんの家、泊めてよ」
蝶子の笑み。
鮫島と腕を絡をませ歩いていく。
暗転していく。
鮫島N「君、名前は?」
蝶子N「蝶子」

3◯鮫島のアパート・リビング

横になっている蝶子が目を覚ます。
スケッチしている鮫島。
蝶子が動こうとすると、鮫島が手を差し出す(蝶子に対して、動くな、という動作)。
鮫島「あっ……う、動かないで」
蝶子「へえ、お兄さん本当に絵描き先生だったんだ」
鮫島は絵を書き続ける。
鮫島が鉛筆を蝶子の方に向け、尺を計っている。
蝶子の体育座りの股の間に鮫島が見える。
蝶子の四肢を舐めるように見る鮫島。
蝶子N「蝶子、先生のこと気に入っちゃった。ねぇ、モデルしてあげるからしばらくここに泊めてよ?」
鮫島N「……」
蝶子N「うふふっ。お腹すいたから買い物いこ? 洋服貸して?」
スケッチブックに蝶のイラスト、そこに服が投げ捨てられる。

4◯街中(公園とか)

蝶子は鮫島の服を着ている。
髪は二つに分けており、まるで別人。
青果店のカゴ(段ボール)から林檎を取る。
蝶子「一個、頂戴!」
店長「まいど!」
蝶子は林檎を持ちながら楽しそうに歩いている。
鮫島N「何でその林檎なの? 良い林檎なら他にいっぱいあいるよ」
蝶子N「先生、ヴァニタスだよ」
鮫島N「ヴァニタスって?」
蝶子N「画家先生なら知っているでしょ? ねえ、あれ食べようよ!」

4.5◯公園

公園のベンチでクレープを食べている鮫島と蝶子。
蝶子「先生、ほっぺにクリームが着いているわ」
鮫島の頬にクリームが付いている。
蝶子が舐めとる。
鮫島「(焦り、キョロキョロし、俯き)あ、え、あの……」
蝶子「(微笑み)どうして? って思ってるでしょ? でも分かってるはずだよ、私は貴方の香りに引き寄せられた蝶。初めて会ったときから、あの人ごみの中から貴方だけが見えたわ、ふふふ……ねえ、記念に写メ、撮ろうよ」
鮫島「うわっ」
二人がプリクラで写真を撮る。
写真、蝶子が自分と鮫島の口に指を入れて笑顔を作っている(鮫島は嫌々、笑顔にされている感)

5○鮫島のアパート リビング

〜夢〜(ここは台詞を言わせようと思います)
部屋には丸められた紙が無造作に散らばる。
鮫島は頭をかきながら、狂気じみた顔でスケッチを続ける。
鮫島N「違う……僕の描きたいのはこんなんじゃない!! 僕は蛆虫だ! 君の何一つ、表現できない」
鮫島テーブルの上を見る。
リンゴが腐りかけている。
鮫島「ああ……」
蝶子が後ろから鮫島の首に抱きつく。
蝶子「これで良いのよ……(歩いて来て、抱きつく)。先生、栄えるものが滅ぶ姿は、美しいと思わない?」
蝶子の背中からは巨大な羽が生えている。
暗転。

6◯鮫島のアパート・リビング 〜夢終了〜

目を覚ます鮫島、鉛筆を落とす。
鮫島「蝶子、見て、完成したよ」
蝶子が首に痣のある状態状態で死んでいる(近くにロープが落ちている)。
泡を吹いて、舌を垂らしている。
蝶子の汚れた下着を脱がし、それを食べる。
蝶子N「(デートの時の映像に被せながら)先生、このリンゴは美しくないけど、尊いと思わない? 虚しくって、儚くて、愛おしいと思うの。わたしもそうなりたい」
鮫島がえづきながら糞を食べる。
鮫島「(顔を上げ、糞を顔中につけながら)あああ素美しい…なんて綺麗なんだ。そうだ、これこそ……ヴァニタスだ(うひひと笑う)」
鮫島が自分の口を指で引っぱり、笑い顔を作る。
鮫島「(が、真顔になり)でも、僕はまだそこに近づけていない。死んだのちの出産なんだ。そうだ、名だたる画家の魂は肉体じゃなくて作品に宿るものだろう? 死体から生まれた糞と一緒だよ……一緒だよー」
鮫島が床(壁)に頭を打ち付ける。
鮫島「糞と一緒だよー……蝶子……蝶子……」

7◯鮫島のアパート・トイレ前

糞に群がっている蛆。
ドアノブで首を吊って自殺している糞まみれの安らかな鮫島(おでこから血)。
傍らには蝶子の死体を抱いている。
フラッシュ、冒頭の糞を食う天使蝶子
二人の死体の上に羽が落ちる。
イーゼルの上の絵、笑顔の首つり死体の蝶子の背中がヒビ割れ、羽が生えている。



終わり
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