Lotus

□瓦解
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ほつれ、壊れ、落ちてゆく。


めっきり夏が近くなった。
走っているときはわからない。
立ち止まり、額を拭うと、肌に浮かぶ汗の量にびっくりする。
そのまま、空を見上げ、ひとつ深呼吸。空はどこまでも青く、目眩がする。
日差しと、自らの体温が熱い。こんなにも、夏の日差しは自分に近しいというのに、それなのに、どうして自分はこの日差しに同化していないのだろう。
セナはそう思う。

「集合!!」

遠くのフィールドの向こうで、彼が呼ぶ。行かなければ。
腕で拭った汗の粒を振り払い、セナは走り出した。



アメリカ戦を控え、練習は過酷なものとなってきた。
朝練、通常練、休日練。時間もそうだが、何より内容が濃くなった。
ブリッツ。これを完成させなければ、アメリカ戦に勝機はない。以前に比べ、力は増してきたといえ、セナはまだパワー不足。モン太と共に競うようにタックル練習をする日々がある。

また、セナとモン太は朝練のために栗田の家に半下宿状態である。学校が近くなったことをいいことに、セナは練習後、一人で特別メニューの走り込みをやっている。
ここまでする根底には、「ムサシに戻ってきてもらう」という目標がある。

キッカー・ムサシ。
蛭魔と栗田の仲間。
泥門デビルバッツに必要不可欠な仲間。
必ず戻ってもらう。そう約束した。
そのためには、勝たなくてはならない。
セナとモン太は覚悟していた。
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