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人肌恋しい。
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別れようか。
そう切り出したのは私だったのかあの人だったのか。話し合った記憶が無いのだから、自然消滅だったのかも知れない。

嫌いになった訳じゃなかったけど、別に好きでもなかったから。
多分それはあの人も同じ。
周りに急かされて雰囲気に流されて、甘い空気になったことなんてなかった。

身体の相性はよかったけど、飢えていたわけじゃないから困らない。
周りには色々聞かれたけど特に理由なんてなかったから、適当に喧嘩したとか言っておいた。

好きとか愛してるとかも言った覚えがない。体は何回か交わったけれど、言葉は交わさなかったように思う。

冷めていたとかそんなんじゃなくて、お互いに興味が無かっただけだ。
電話もメールも必要最低限しかしていない。そのアドレスも既に携帯から消えている。

数年後とか数十年後とかにふとした瞬間思い出すかも知れないし思い出さないかもしれない。
たったそれだけの出来事。

だから、寂しくはない。
少しだけ虚しいだけだから。

人肌が恋しいだけだから。

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