君色グラフィティ


□マーク
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「…ッ」

脇のすぐ横、鎖骨の下辺りにチリッとした痛みが走り、その跡を慰めるように舌が這う。

「…ぁ」

生温かい舌の感触に、力の入っていた身体が弛緩して、吐息が漏れた。そんな僕を見ながら、鳴海は、ふっ、と表情を緩める。
この表情、優しくて好き。だから、ちょっとドキドキする。

「甘い」
「味なんかする?」

味がしたとしても、人間って汗かくから、しょっぱい気がするんだけど…。

「想は甘いよ。菓子みたい」

そうやって笑う、鳴海の表情も十分甘い。何度見たって、少し照れる。
でも、お菓子みたいって、糖分取りすぎみたいでちょっとなぁ…。それなりに食事のバランスとか考えてるのに。

「なんか身体に悪そう…」
「中毒性あるしな」
「なにそれ、人を危ないクスリみたいに言わないでよ」

のしかかる身体を押し返そうとしたら、鳴海は意地悪く笑って、さらに体重をかけてくる。

「はは、じゃあ俺はもうジャンキーだな」

そして、再び鎖骨の辺りに唇が触れて、僕は慌てて鳴海の髪を引っ張った。

「あ、こら、もうダメだってば!んなに、跡付けたら…」

部活で誰かに見られると、ごまかすのが大変なんだからって何度言っても、鳴海は返事だけ。

「はいはい」

ほら、今日も返事だけして、唇で皮膚を擽りながらチャンスを狙ってる。

「もー!」
「っと…」

今日は負けない!
力一杯、鳴海を押し返して、形勢を逆転する。いわゆる押し倒したって格好。あんまりない眺めだなぁ。

「全然分かってないでしょ!仕返ししてやるー」

こうしたら、鳴海も少し慌てるかと思ったのに、鳴海は全然慌てるそぶりも無く、自分からシャツの襟を開いて、ここにどうぞ、と言わんばかりに鎖骨を露わにした。

「はい、ドウゾ」

そんな余裕な態度を取られたら、僕の方が恥ずかしくなって、それでも後には引けない状況で…。精一杯鳴海を睨んで、肩の辺りに噛み付いた。

「っ! 噛んだら痛いよ」
「…鳴海のバカ」

憎まれ口を吐いたけど、たしかにちょっと痛そうだったから、跡の残った皮膚を舌で撫でる。…こうしてると、犬か猫にでもなった気分だ。

「想は可愛いな」

苦笑いをしながら、鳴海が抱きしめてくれる。可愛いって言われるのは不本意だけど、抱きしめられるのは好きだから逆らえない。肺一杯に鳴海の匂いを吸い込んだら、安心感が心を満たした。
ふぅ、と息を吐いて、鳴海に身を預ける。

…僕も、中毒かも。

この香りと、それがもたらす安心感からは、しばらく逃れられそうにない。


<END>



たまには、こんな風にじゃれ合ってたりしそうです。

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